第一話 / 喜劇は悲劇へ ページ1
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どこにでもあるようなのどかな村の村外れに、たいそう美しい若夫婦が住んでいた。
彼らは村中で評判で、誰もが羨む、そんな夫婦だった。
しかしそんな彼らにも悩みはあるもので……それは、いつまでたっても子供ができないこと。
彼らは身分が全く違い、駆け落ちのように結婚した。
だからこそ、早く二人の愛の形を残したかったのだ。
なのに願っても願ってもそれは叶わず、段々と女は気を病んでしまうようになった。
それを見た旦那は、女に言った。
「今年で最後にしよう。子供が全てじゃないよ」と。
そんな時だった。遂に、お腹に一人の魂が宿ったのだ。
二人は泣いて喜んだ。神様はちゃんと見ていてくれたのだ、と。
産まれたのは、夫婦によく似たとても可愛らしい女の子。
ただ夫婦と違うのは、異国のもののような色素の薄い青眼に、薄水色の毛。
夫婦は驚きはしたが、「きっとこの子は特別なのよ」と溺愛した。
娘はAと名付けられ、大切に大切に育てられた。
しかし、それが変わるのはAが四歳の頃。
大きな嵐の日だった。
「なんでコイツは俺たちに似てねえんだ」
「知らないわよ!!こんなのなら生まれない方がマシだったわ」
日に日に夫婦喧嘩が増え、A自身に強くあたるようになった。
まだ幼いAに、否村の誰一人としてその原因は分からなかった。
さらに日が経つと、今度は村中がそうなった。
Aのことを心配していた人でさえ、たちまちAを忌み嫌い、寄ってたかっていじめるようになった。
もうそうなってしまえば誰も止めることは出来ないししない。
Aの5歳の誕生日、Aは捨てられた。
『…おかあさ、ん……おと、さん』
どれだけ泣いても、昔の両親の姿は戻ってこない。
体の傷が何よりの証拠。
「ははっ、もっと絶望すればいい…Aは俺のもの…俺だけの…ははっ」
闇夜に溶けるその声に、Aが気づくはずもなかった。
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蓮 - 初めて読みました!更新頑張ってください! (2020年2月23日 21時) (レス) id: 2cb59a0a8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろりお | 作成日時:2020年1月24日 7時