第九十話 ページ45
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なだらかな下山道を不死川さんに揺られながら下る。
空に浮かぶ星をぼーっと見つめていれば賑やかな声が遠くから聞こえてきた。
「A!」
私の名前を呼ぶ声が段々と大きくなって、不死川さんの腕の中からひょっこり顔を出せば先刻と変わりなく、明るい笑みを携えて側まで近寄って来てくれた。
「待たせたな!もう大丈夫だ!!」
煉獄さんの声を聞くと、笑顔を見ると心があったかくなる。そんなことを考えながら、にこにことしばらく煉獄さんと見つめあっていれば、ふっと視界から煉獄さんが消えた。
?でいっぱいの私の耳に聞こえてきたのは
「むっ!なぜ隠すのだ不死川!!」
私と同じように疑問に満ち満ちた煉獄さんの声。
それを華麗に無視した張本人は、そのまま歩みを早めて、遂には走り始めた。
「なぜ逃げるのだ不死川!」
まぁ、煉獄さんも柱であって、私を抱えたままの不死川さんに余裕で追いついて横に並んだ。
私を覗き込む煉獄さんVSその度に向きを変える不死川さん、の戦いが勃発した。
ぐるぐると視界が回転する中、抱えてもらってる身で申し訳ないけどめっちゃ目が回る…キモチワルイ
遠慮ぎみに隊服の裾を引っ張ってみるが全く気づいてくれない。
その間にも回転はどんどん早くなっていって、呼ぶために引っ張っていた裾は、振り落とされないための持ち手へと変わっていった。
『ちょ、あのっ、…うぐ…っ…』
とうとう声を出そうとしても遠心力でお腹に痛みが走る。
あば、肋!!多分折れてるんだって!!
もう既に満身創痍だけど、トドメは仲間にさされるのか……
そんなことを考え始めた時、本日何度目かのゴンッという鈍い音が響いた。
「やはり貴女方に任せるのは間違いでしたね」
「ッ、胡蝶!!」
た、助かった…
さっき一瞬綺麗な花畑と川が見えたけど、今はにっこりと笑みを浮かべて右手をぐっと握るしのぶちゃんが見える…
死にかけてたからかな…すっごい輝いてみえる…
「これ以上Aに負荷をかけないでください。ただでさえ死にかけてるんですから」
『しのぶちゃん、すき』
あ、間違えた
『ありがと』
私の言葉にしのぶちゃんはふわっと笑う。
でもそれも一瞬
「もう、安心してください………A」
しのぶちゃんの手が私の方へ伸びる
頭にモヤがかかったように、意識が微睡んでゆく
最後に見えたしのぶちゃんの顔は、とても、寂しげだった
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キメツ推し - 面白かったです!パスワードを知りたいです (3月29日 12時) (レス) @page50 id: 267e3fd993 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - めっちゃ面白かったですパスワード教えていただけると嬉しいです (3月1日 20時) (レス) id: a79ca47ff6 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - とても面白かったです!パスワード教えていただけると嬉しいです (3月1日 20時) (レス) @page50 id: a79ca47ff6 (このIDを非表示/違反報告)
うらら - とっても面白かったです!パスワードを教えていただけると嬉しいです! (12月17日 22時) (レス) @page50 id: 5151e61b26 (このIDを非表示/違反報告)
えー(プロフ) - 面白すぎて一気に見てしまいました!パスワードを教えていただければさいわいです! (11月26日 21時) (レス) @page50 id: 9a652782c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白米 | 作成日時:2020年2月17日 22時