第五十四話 ページ9
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私の生家があった街
蝶屋敷からも、本部からもさほど遠くない距離にある。
私の家族が殺された場所であるが、お墓もここにあるので年に一度、鴨丸と一緒に訪れていた。
でも……それも今年で最後だなんて
鴨丸と出会ったのは、私が五歳の時に道端で弱っていたところを助けたのがきっかけだった。
まだ雛に近かったのに、近くに母烏の姿はなく、はぐれたか捨てられたか
…鴨丸の目は白っぽかったから、後者の可能性が高かったんだけど。
それからはずっと一緒にいた。
私が鬼殺隊に入った時に、鎹烏を与えられた時は鴨丸が怒っちゃって、自分も鎹烏になるって、私の頭ぐさぐさつつかれたな…
喋ることも出来ない、生まれた時から鎹烏になる訓練を受けてた訳でもない。
御館様にも難しい、と言われて、怒って一年ほど行方不明になったよね
でも、一年後にひょっこり戻ってきて
「オレガAノ鎹烏ダァアッッ!モウ!二度ト一人ニハサセナイィッッ!!」
そう言ってくれた。
血反吐を吐くような努力で鎹烏になったんだ。
家族がいなくなった時も、姉が鬼になった時も、いつもそばで支えてくれたのは紛れもない鴨丸だった。
新しく出来た鴨丸のお墓の前
手を合わせながら、走馬灯のように思い出が頭に蘇る。
私の血の繋がった家族よりも、大切な家族
私は、もう、独りだ
「…帰るぞォ」
『…はい。ありがとう、ございました』
「…何もしてねェ」
そこまで距離はないにしろ、私を抱えてここまで走ってくれた不死川さん。
明日は、柱合会議という名の私の裁判があるらしい。
鴨丸がいなくなった今、私にはもう、鬼殺隊を続ける意思が薄れかけていた。
大切なものは全部、私の腕の中からこぼれおちていって
私は、何も守れない
なんのために生まれた?
何をして生きてきた?
何もかもが、分からなくなった
日天さんが憎かった
恐ろしいほど、どろどろとした感情。
でも、憎んだところで何も変わらない
変えられない
姉の時もそうだった
私は、何もかもを諦めているから
心の底から誰かを憎めない、怒れない
無駄なことを、知っているから
…もう、全てを捨てて楽になりたい
鴨丸や、家族の所へ………
ゴンッ
『…なんで殴るんですか』
「馬鹿なこと考えんなァ。残された奴ァ、先に逝った奴のためにも、自らくたばるもんじゃねェよ」
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キメツ推し - 面白かったです!パスワードを知りたいです (3月29日 12時) (レス) @page50 id: 267e3fd993 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - めっちゃ面白かったですパスワード教えていただけると嬉しいです (3月1日 20時) (レス) id: a79ca47ff6 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - とても面白かったです!パスワード教えていただけると嬉しいです (3月1日 20時) (レス) @page50 id: a79ca47ff6 (このIDを非表示/違反報告)
うらら - とっても面白かったです!パスワードを教えていただけると嬉しいです! (12月17日 22時) (レス) @page50 id: 5151e61b26 (このIDを非表示/違反報告)
えー(プロフ) - 面白すぎて一気に見てしまいました!パスワードを教えていただければさいわいです! (11月26日 21時) (レス) @page50 id: 9a652782c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白米 | 作成日時:2020年2月17日 22時