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第八十六話 ページ41

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かはっ、と血とともに空気が漏れた。



縛られた足ではバランスが取れず、倒れた私に男が馬乗りになる。


そしてさっきのようにまた頬を殴られた。




あぁ、これはいよいよやばい


どこか他人事のように考えながら、羽織りはしっかりと握りしめる。


もう、いいか



だなんて、私は何もかもを諦めかけた。


私が自力で逃げ切れる可能性、約3%

右手首も両足も使えず、日輪刀もない



ついでにいえば家族もいない


私も待つ人なんてもういないのだ。



…あァ、でも柱のみんなには、一言お礼と謝罪を言いたかった。


最後の最期まで迷惑をかけてごめん、と

私なんかのために時間を使ってくれてありがとう、と。



彼らはとてつもなく優しいから、こんな私にも良くしてくれた。


でももう、私のことは気にしなくて大丈夫

どこかで鬼にやられたんだなくらいに思ってくれるよね

だから…すぐに忘れてくれる

私の事なんて、その程度






隊服のボタンを意外にも丁寧に外す男を


その周りで気持ち悪い笑みを浮かべる男を


どうしようもなく惨めな自分を



何もかもを見たくなくて、目をそらす様に私はそっと目を閉じた。



そんな私の耳に聞こえてきたのは雷の轟音だった。



あれ、今日雨だったっけ




いやいや、月が綺麗に見えるくらいには晴れてた。




じゃあ…この音は?




………まぁもう関係ない。




コレが終わって、まだ生きてたら


その時は鴨丸に会いに行こう



もう、鬼殺隊にはいられない。



「おーい、俺にもヤラせろよ」


「焦らすなって。こんな山ん中、誰も来ねェんだしよ」




男たちの声がやけに耳につく



肌が外気に晒され、無意識に全身が震える



どんなに強がったって、他人事のように考えてみたって


やっぱ怖いもんは怖いんだよ

抵抗しようにも骨も心も折られた。もう…




男たちに触られた場所が気持ち悪くて。



誰も来ないと分かっていても


心のどこかで私は__






分かってる

彼らが優しさだけで私に良くしてくれてるわけじゃないことなんて

私の帰りを待ってくれてるって

私のことを“その程度”だなんて思ってない

大切な仲間と認めてくれてるって




全部本当は分かってる



自分に嘘をついても、やっぱり心も身体も騙されてくれなくて




たすけて



音にならない声が

閉じた目から溢れた涙が



そっと、こぼれ落ちた。



刹那__




「蛇の呼吸__」

「風の呼吸__」




鉄の扉が吹っ飛んだ

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作品ジャンル:アニメ
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キメツ推し - 面白かったです!パスワードを知りたいです (3月29日 12時) (レス) @page50 id: 267e3fd993 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - めっちゃ面白かったですパスワード教えていただけると嬉しいです (3月1日 20時) (レス) id: a79ca47ff6 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - とても面白かったです!パスワード教えていただけると嬉しいです (3月1日 20時) (レス) @page50 id: a79ca47ff6 (このIDを非表示/違反報告)
うらら - とっても面白かったです!パスワードを教えていただけると嬉しいです! (12月17日 22時) (レス) @page50 id: 5151e61b26 (このIDを非表示/違反報告)
えー(プロフ) - 面白すぎて一気に見てしまいました!パスワードを教えていただければさいわいです! (11月26日 21時) (レス) @page50 id: 9a652782c8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白米 | 作成日時:2020年2月17日 22時

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