検索窓
今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:168,313 hit

17 ページ19

眠れない。
明日の不安からか、安心感からか。
いや、この二つには当てはまらない何かが、私の心を押さえつけている。
時刻は一時を回っていた。
何も考えないように、そう思えば思うほど思えないわけで。
私は仕方ない、とベットから降りる。
飲み物でも飲んで落ち着こう。


「…こんな時間にどうした」

「り、理鶯くんこそ…私の部屋の前で何してるの」

「いつもここで寝ているからな」

「寒くない?」

「あぁ。大丈夫だ…眠れないのか」


理鶯くんの腕が伸びてくる。
そして、私の手を握り、私をゆっくりと引っ張って自分の膝の上に座らせる。
私は最後だし、なんて考えて抵抗することを辞めた。


「眠れないのなら、小官の身の上話聞いてくれないか」

「理鶯くんの昔の話? 聞きたいです」

「そうか…小官は元、海兵であった」


戦争が起こればまず初めに海兵が敵陣に送り込まれる。視察も兼ねてだ。
小官らはその時、初めて訓練以外で武器を扱った。
国の勝利のため、その国の住民、兵隊を殺さねばならない。
小官も人を殺した一人だ。
だが、それは相手も同じこと。
小官は友人を一人、亡くしてしまったんだ。
助けられた命を、助けられなかった。


「あいつはとても良い奴だったんだ。死ぬだなんて思わなかった…」

「り、おうくん?」


なんだか、様子がおかしい。
なんで、今、こんな残酷な話をし出すんだろう。
顔を見ようにも彼の腕の中で身動きが取れない。
右肩には彼の頭が乗っていて、首を動かしても見えない。


「軍が復活すれば、小官は今は亡き仲間のために軍へ戻らねばならない。…許してくれ…許して…」

「理鶯くん、怖い夢でも見たの?」

「Aだけは、どこへもいかないでくれ…お願いだ…」

「私はどこにも行きませんから。何があったか、聞かせてください」


その言葉は彼に届いたのか。
腕の力が緩み、私は彼の顔を見ることが出来た。
青い目から一筋の涙。
彼の泣いた顔なんて初めて見たし、泣く人だなんて思わなかった。


「…昔の夢を見ただけだ。取り乱してしまった」

「理鶯くんもこういう事、あるんですね」

「すまない」

「良いんですよ。たまにこういう日があっても良いじゃないですか」

「Aは小官が泣いていたら、困るか?」

「困るというか、心配しますよ。それと安心します」

「…安心?」

「理鶯くんも私と同じ、人なんだなって思えるからです」

「? 小官は人間だ」

「ふふ。そうでしたね」

18→←16



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (286 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
458人がお気に入り
設定タグ:ヒプマイ , 毒島メイソン理鶯 , MTC   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あずま真太郎 - 完結おめでとうございます!(*´ω`)オメデトー 更新を毎日楽しみにしていたので複雑な気分ですが()毎日楽しませていただいてました。お疲れ様でした! (2019年1月23日 7時) (レス) id: 9ab5b26630 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - シルクルさん» ありがとうございます!!嬉しい気持ちでいっつぱいです(涙 頑張ります!! (2019年1月23日 6時) (レス) id: 6c48c3ca2f (このIDを非表示/違反報告)
amro(プロフ) - 完結お疲れ様でした。最後まで理鶯の異常な所がえがかれてて良かったです(^^) 素敵な作品ありがとうございました。 (2019年1月23日 3時) (レス) id: 18748080be (このIDを非表示/違反報告)
シルクル(プロフ) - 燐さん» めちゃくちゃ分かります。彼は根っからの一途というのが私の解釈で、解釈違いが起きてなくてとても嬉しいです! 短編小説の更新頑張ってください! 素敵なコメントをありがとうございました! (2019年1月23日 2時) (レス) id: 53fd95a37d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 更新毎回楽しみにしています!!私の最推しはもちろん(?)理鶯さんですストーカー気質という発想がすごいと思いました!!ヤンデレとかもうおぉ。って感じです(伝われ!)これからも応援してます!! (2019年1月22日 22時) (レス) id: 6c48c3ca2f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:シルクル | 作成日時:2019年1月7日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。