『インモラル 4』

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藤ヶ谷さんの家を出て、買い物をしてから自宅に帰った。

「…え」

一晩家を開けたのに、出てった時のままで全く散らかってない。

藤ヶ谷さんだよね、みっくんは食器を片付けたりしないもん。

台所へ行き、洗いかごに立て掛けてあるお皿を片付けようとしたけど、お皿が少し汚れてる。

他のを見てもちょっとまだヌルッてしてたり。

洗い直そうと流しに入れると、スポンジが何だか黒い。

…まさか、食器用のスポンジでフライパン洗った？

フレンチトースト作ったとか言ってたし。

「意外にちゃんと出来ないんだ、藤ヶ谷さん」

可愛い。

洗ってくれたことがすごく嬉しい。完璧じゃなくても。

お風呂場はきちんとお湯も抜いてあるし、蓋も立て掛けてあるし、乾燥をかけてくれたみたいで床も濡れてない。

「お風呂は完璧ですねっ」

まるで、小姑のようにチェック。楽しい〜。

「よぉしっ！家事頑張るぞっ」

もともと家事は好きだけど、いつもよりやる気満々になった。



「ただいま〜」

夜。みっくんの声がしたから玄関へ走った。

「みっくん、おかえり！」

みっくんは私を見るとニヤリ。

ん？なあに？

「食器、洗ってあっただろ」

ドヤ顔のみっくん。

「えっ？みっくんが食器を洗ったの？！」

あの何にもやらないみっくんが？

「勘違いすんなよ、別に藤ヶ谷に影響されてとかじゃねぇから」

…影響されたんだね、みっくん。

「ありがとう、みっくん。藤ヶ谷さんが洗ったのかと思った」

「風呂は藤ヶ谷があがったあと片付けてたから、ちゃんとできてるか見といたほうがいいぞ」

お皿よりきちんとできてたよ？みっくん。

とは言わない。

「みっくん、朝早いのにありがとね。朝、起きれなくてごめんね…」

「いいよ、たまには。あと、皐月ちゃんから電話があったぞ」

ドキッ。

「な、なんて？」

「なんか色々付き合わせちゃってごめんねだってさ」

皐月さん、気持ちの整理が出来たのかな。

私は全く気づかなかった。

あんなに泣いていた皐月さんが一晩で立ち直れるはずがないのに。

自分のことで精一杯で。

でも気付いてあげられたとしても、きっと私は何も出来なかったと思う。

皐月さんを救えるのは、きっと玉森くんだけ。

だって、私もそうだから。

藤ヶ谷さんだけ。

藤ヶ谷さんだけが、この許されない罪を分かち合える。



皐月さんの心の病は、私と藤ヶ谷さんの関係を大きく変えることになった。

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