『インモラル 4』

おまけ ページ23

北山side

Aが出ていった玄関をぼんやり見つめてると、藤ヶ谷が笑った。

「…んだよ」

「北山、大丈夫だよ。俺、家事できるから」

何でも言ってね、なんて優しく微笑む藤ヶ谷に腹が立った。

「いらねぇよ」

リビングに戻ると冷蔵庫から缶ビールを2本取り出し、1本は藤ヶ谷に渡した。

「ありがと」

台所からグラスを持ってくる藤ヶ谷。

「…そのまんま飲めよ」

「どうして？北山もいつもグラスに入れてるでしょ」

「洗い物が増えるだろうが」

俺が言うと、目を丸くした後、大笑いする藤ヶ谷。

「大丈夫、俺が洗うから、な？」

完全にバカにしてやがる。

「…風呂、入ってくる」

「うん」

Aが沸かしておいてくれた風呂に入った。

…あいつ、大丈夫かな。

皐月ちゃんにいいようにされてないといいけど。

…藤ヶ谷、別に大丈夫そうだし、泊めるんじゃなかった。

モヤモヤしながら風呂から上がって、ふと着替えがないことに気がついた。

…やべ、いつもAが準備してくれてるから、用意すんの忘れた。

俺、ほんとAいないとダメな奴じゃねぇか。

「藤ヶ谷っ！」

洗面所のドアを少し開けて大きな声で呼ぶと、「どうしたの」って怪訝な顔の藤ヶ谷。

「…着替え」

「着替えならAちゃんにもらったよ」

「違う。…俺の着替え、持ってきて」

「え」

しーん。

「ぶはっ！」

大爆笑の藤ヶ谷。

ひとしきり笑った後、藤ヶ谷は着替えを持ってきてくれた。

「ベットの上に一式準備されてたよ、はい」

「…どーも」

受け取りドアを乱暴に閉めると、藤ヶ谷の笑い声が聞こえた。

すっげー屈辱的だ…。



「北山、窓の鍵は俺が確認したからね」

「…」

「朝ごはんも簡単なので良ければ俺が作るよ」

キラキラと王子スマイルの藤ヶ谷。

ムカつく。

そこで携帯が鳴った。見るとAからの着信だった。

「もしもし」

『もしもし？みっくん？大丈夫？私、洗面所に着替え置いてなかったけど平気だった？』

「ああ、別に平気…」

答えようとすると、藤ヶ谷がいつの間にか顔を近づけていて聞き耳を立てていたみたいで、声を押さえながら笑ってやがる。

「大丈夫だわ！イチイチんなことで電話してくんな！」

電話を切ると、藤ヶ谷がじとーっと睨んできた。

「何」

「…別に」

やっぱり藤ヶ谷なんか泊めるんじゃなかった。

早く明日になんねぇかな。

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