『インモラル 4』

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「大丈夫？」

申し訳なさそうに服を着せてくれる藤ヶ谷さん。

さっきと同じ人とはとても思えない。

身体は怠いし、好き勝手にされたことに憤りを感じている私はいじわるすることにした。

「大丈夫じゃないです…」

「ごめんね」

ふわりと抱きしめられて満たされた気持ちになるけど、もう少し調子に乗ってみた。

「もう藤ヶ谷さんとはしません」

「え」

抱きしめていた腕をほどいて私を見つめる藤ヶ谷さんは困った顔をした。

か、可愛い…。

「次はちゃんと優しくするから、また俺として下さい。お願いします」

低姿勢にお願いしてくる藤ヶ谷さんに優越感。

ああ、ダメだ、にやける。

今まで散々断られた私の惨めさを味わえばいいんだから。

「みっくんはもっと優しく抱いてくれますよ」

嘘だけど。

チラッ。

藤ヶ谷さんを見ると目がすわってる。

「…ふ〜ん」

私から離れて無言で服を着る藤ヶ谷さん。

あれ、調子乗りすぎた？私…。

「ふ、藤ヶ谷さん？」

「…」

構って欲しくてネクタイを着けようとする藤ヶ谷さんの邪魔をした。

「返してくれる？」

ネクタイを奪った私に冷たく言い放つ藤ヶ谷さん。

「帰るんですか？」

「帰るよ、Aちゃんも身体落ち着いたんなら帰ったら？」

「まだ身体が辛くて帰れないっ」

「じゃあもう少し休んでから帰れば？」

ネクタイ、って手のひらを差し出す藤ヶ谷さん。

「ネクタイ、つけてあげますよっ」

可愛く笑ってみた。

そしたら意外にもツボだったみたいで、藤ヶ谷さんが少し赤くなった。

「じゃあお願い」

顎を少し上げて「ん」って待つ藤ヶ谷さんにキュンキュンが止まらない私。

ネクタイをつけてあげて、藤ヶ谷さんの胸元を指でツンと押した。

「いってらっしゃい。あ･な･た」

「いや、帰るんだけど。我が家に」

「もう！夫婦ごっこさせて下さい！」

「…変な子」

「だけどそんな君も？」

「ふはっ。…好きだよ」

チュ、と小鳥みたいなキスをしてくれた。

「…俺、こんなあほなやり取り、Aちゃんとしかしたことないよ」

「藤ヶ谷さんの初めて、いただきました」

「…」

「しらけた顔の藤ヶ谷さんも素敵です」

「こんな変な子が可愛く思えるとか、俺相当おかしいよね」

「…藤ヶ谷さん、また抱いてくれますか？」

面食らった顔の藤ヶ谷さん。

「今日…すごく幸せでした」

「…うん、俺もだよ」

だけどそろそろ夢から覚めないと。

私達には帰らなきゃいけない場所があるから。

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