『インモラル 3』

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「駄目だよ、県外だし帰らないと着くのが遅くなるから」

優しく頭を撫でられて、藤ヶ谷さんにその気がないことがわかり悲しくなった。

「…藤ヶ谷さんは、私とどうなりたいの」

声が震える。

「どうなりたいって？」

「だって、何でキスはよくてその先はダメなのかわかんない」

「その先がダメってわけじゃないけど、ここじゃ無理だよ。それはわかるよね？」

「車でシてる人とかいますよ」

「そう？でも俺は出来ないから。ごめんね」

謝られると、すごい惨め…。

「…じゃあもう降りる」

最悪だ、私。

けど止まらない。

「Aちゃん」

低い声に怯むけど、今更引き下がれない。

「降りて欲しくないなら、帰らないで。車が駄目ならどこか、その…」

女から誘うとか、ほんと有り得ない。

だけど、それでも藤ヶ谷さんが欲しいんです。

「ホテル、とか…」

顔が熱い。

恥ずかしすぎて涙が出そう。

「ホテルなんかないよ、こんな山の中」

バッサリと断られた。

もうここまできたらひけない。頑張れ、私。

「じゃあ向こうに着いてから…」

「向こう着く頃はもう北山が帰ってくる時間だよ」

「いいの、別に」

私の返答に驚く藤ヶ谷さん。

「…けど、そしたらもう北山のとこには帰れなくなっちゃうよ？」

藤ヶ谷さんの言う通りだ。

私が夜になっても帰らなかったらみっくんは確実に藤ヶ谷さんといるからだと思うはず。

仕事で疲れて帰ってきたのに奥さんが不倫相手と一緒にいて帰って来ない。

そうなったらみっくんとはほんとにもう終わりだ。

「…やっぱり会うのはこれで最後にしよう」

「何で？！」

「Aちゃん、北山捨てて俺と一緒になれるの？」

「…」

無理だ。

私も皐月さんと一緒で家庭を壊す気はない。

けど、なら藤ヶ谷さんは？

「藤ヶ谷さんだって、皐月さんを捨てて私と一緒になる気ないじゃない」

「Aちゃんがほんとに俺と一緒にいたいって思ってくれてるなら、俺はいいよ」

冷静に、迷いのない声でそう言う藤ヶ谷さんに驚いた。

「…かなり辛い思いをさせちゃうかもしれないけど、俺を選んでくれるならすべて捨ててもいい」

「で、も…」

頭によぎるみっくんの悲しい顔。

私はすべて捨てることは、できない。

完全にひいてしまってる私を見てため息をつくと、「帰ろうか」と藤ヶ谷さんは言って車を発進させた。

これじゃあ、まるで私『あなたとは、やりたいけど一緒にはなれないよ』って言ってる最低な浮気男じゃん…。

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