『インモラル 3』

122 ページ24

「藤ヶ谷さん」

「ん？」

運転しながら返事をする藤ヶ谷さん。

「ふふ、何でもないです」

あ〜幸せ。

隣で運転してる藤ヶ谷さんを見てるだけでもう胸がいっぱい。

「…藤ヶ谷さん」

「だから何？」

呆れたように笑う藤ヶ谷さん。

「ふふふ〜」

「…変な子」

藤ヶ谷さんとずっと一緒にいれるなら一生変な子でいいや。

「藤ヶ谷さん、初めて会った日のこと覚えてますか？」

「ぶつかった時だよね。覚えてるよ」

「あの時、藤ヶ谷さんの綺麗な指に見とれてました…」

「そうなの？」

「はい。で、顔見たらイケメンでもうびっくりでした」

照れたようにはにかむ藤ヶ谷さん。

「…俺もね、初めて見たときAちゃんのこと可愛いなって思ったよ」

「嘘だ〜」

「嘘じゃないよ。Aちゃんは可愛いよ」

きゅううん。

お世辞でも嬉しい。

「そういえばこの間玉森くんに「可愛い」って言われたんですけど、「可愛らしい」に言い換えられたんですよ。なんかやな感じですよね」

「…可愛いって言われたの？」

「可愛らしい、でした」

「…ふ〜ん」

おっ。ヤキモチですか？

「えへへ」

嬉しくてにやける〜っ！

「そんなに嬉しかったの？」

「はい！」

「…」

「藤ヶ谷さん？」

し〜ん。

ヤバイ、調子にのりすぎた。

「藤ヶ谷さ〜ん」

「…」

まさか、これってケンカ？！

せっかく二人でいる大事な時間なのに。

「…あ〜あ、もうつまんないな」

え。

キョロキョロ。

車内には私と藤ヶ谷さんだけ。

てことは、今の台詞は藤ヶ谷さん？

じとーって見てくる藤ヶ谷さん。

すっごく可愛い！

「つまんない、ですか？」

「うん、つまんない」

「…何か一発芸でもしましょうか？」

信号で車が停まって、何でだよとでも言いたげな顔をしてこっちを見る藤ヶ谷さん。

久々に目が合ってドキッとした。

「いいよ、それもつまんなそうだし」

ガーン。

落ち込んでると、藤ヶ谷さんが「ご機嫌取りしてよ」って不貞腐れた顔で自分の頬を指でトントンとした。

ん？何？笑えってこと？

ニコッ。

可愛く笑ってみたけど「違う」ってしらけた顔をする藤ヶ谷さん。

「キスして。Aちゃんから」

「ええ？！」

「早く。青になっちゃうから」

じっと見つめられると恥ずかしい。

でも頬っぺただから、できるかな。

顔を近づけると藤ヶ谷さんは「あ、青になっちゃった」って顔をそらした。

そんなぁ〜っ。

123→←121

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す