『インモラル 3』

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次の日。

玉森くんからLINEが来て、今日は大学がないからってことで、すぐに自転車を取りに行くことになった。

教えてもらった住所をナビに入れて向かう。

玉森くんの家は割と近かった。

自宅の前でもうすでに待っていてくれたから、手招きをしたらこちらに来てくれる玉森くん。

「おはよう」

助手席に乗った玉森くんに挨拶したけど「どーも…」って何だかよそよそしい。

「どうかした？」

「これ、返します」

差し出されたのはお金だった。

「何これ」

「昨日のタクシー代」

「何で？いいよ、私のせいで玉森くん…」

「違うんだって」

不貞腐れた顔の玉森くん。

「…ほんとは別に大して痛くなかったんだけど、今井さんが大袈裟に心配して帰れっていうからラッキーって思って帰ろうとしたらさ、休憩室の窓からトボトボ歩く北山さんが見えたんだよね」

そんな落ちてたんだ、私…。藤ヶ谷さんにも猫背になってるって言われたし。

「んで、小野さんが北山さんは今日電車で来てたっつってるのを聞いたから、帰る準備して急いで追っかけてったの」

「何で追っかけたの？」

「だってすげぇ気にしてる感じだったから」

そうなんだ。

「そしたら俺のことなんか忘れたみたいに藤ヶ谷さんといちゃつきだしたっつーわけ」

「…ごめん」

「いいけど。で、はじめに自転車乗れないから駅に来たって嘘ついちゃったし、なんか言い出しにくくて」

「何で嘘ついたの？」

「知らない、つーかよくわかんない」

わかんないの？自分のことなのに。

「…じゃあ背中は平気なの？」

無言で頷く玉森くん。

「なんだ〜、良かった」

「…ごめん」

「あれ？でもじゃあ今日は何で？」

「自転車取りに行くのに電車乗るのめんどくさいから」

人を何だと思ってるんだろ。

「…じゃあ行こっか」

車を走らせた。

「けどお金はいいよ、ほんとに」

「いらないっす」

「受け取ってよ」

「やだ」

も〜。

「…あ、じゃあさ、これでなんか甘いものでも食べに行かない？」

休みの日は10時くらいに甘いものが食べたくなっちゃうんだよね、私。

「え？」

「甘いもの、嫌い？」

「嫌いじゃないけど…」

「よしっ、じゃあ行こ〜」

どこに行こうかな。

やっぱりあのいつものカフェ？

何にしてもあまり元気がない玉森くんが笑顔になれるようなとこに行こう。

生意気だけど可愛い弟ができたみたいで何だか嬉しくなった。

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