『インモラル 3』

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「A〜」

「んん…？」

「起きろって。早く出ないと混むからさ」

目を開けるとみっくんのドアップ。

「えっ？！みっくん先に起きたの？！」

「おう。早く着替えろよ。行くぞ〜」

「朝ごはん食べてないよ」

「俺おにぎり作ったから車で食えよ」

「みっくんが？！」

私の声にみっくんは顔をしかめた。

「朝からうるせぇな、早くしろ」

「う、うん！」



行く途中、みっくんが作ってくれたおにぎりを車中で食べた。

「美味しい…」

「ん、良かった」

「みっくん…」

「何」

「好きです、ほんとに…」

側に居てくれてありがとう。

私、ちゃんとするから。

「これからも側に居させて下さい…」

「おにぎりくらいで大げさな奴」

鼻で笑われちゃった。

みっくんの笑うときゅっと上がる口角が好き。

…そうだよ、私こうだった。

みっくんを一途に想ってた。

こういう自分がいい。

これで良かったんだよね。



平日に行ったこの間と違い、今日はすごく混んでいて、前みたいにゆっくり見上げながらの散歩は出来ないけど、はぐれないようにみっくんと手を繋いで歩くのは楽しかった。

みっくんは花より団子。

紅葉よりも食べ物に夢中なみっくんが可愛い。

「あ、あの珈琲屋、有名だし行こうぜ」

この間藤ヶ谷さんと入った珈琲屋さんを指差すみっくん。

「…今日はあんまり珈琲の気分じゃないから」

「じゃあお前はデザートかなんか頼めよ。豆腐のプリンも旨いらしいし」

「ちょっとみっくん…」

スタスタと行ってしまうから慌てて追いかけた。

日曜日だからお店は忙しそうで、バイトの子が注文を取ってくれたから安心した。

…まあ覚えてないよね、私のこと。

そう思ったのに。

「あら、あなた…」

お店の奥さんが私を見て声をかけてきたから顔を思いきり下に向けた。

「…」

奥さんはそれ以上は何も声をかけずにキッチンへ行ってしまった。

「知り合い？」

みっくんに聞かれて心臓が跳ねた。

「ううん、知らない」

無理矢理に笑顔を作ってやり過ごした。

紅葉のトンネル。吊り橋。屋敷。

藤ヶ谷さんの姿を無意識に探してしまう。

こんなところにいるはずがないのに。

ついこの間、隣で微笑んでくれてたのが遠い昔みたい。

「A、どした？」

みっくんに声をかけられて初めて自分が泣いていることに気がついた。

「…感動しちゃって、つい。みっくん、連れてきてくれてありがとう」

私の薄っぺらい言葉に、みっくんは嬉しそうに笑ってくれた。

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