『インモラル』

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お酒のおつまみになるものを買っていこうっていう皐月さんの提案で、うちのそばにあるスーパーへ寄っていくことになった。

「北山さんはいつもお酒のおつまみは何を買われてるんですか？」

皐月さんはみっくんの隣をずっとキープしたまま、楽しそうに話す。

「うちはAが作ったのばっかだからあんま買わないかな」

「え〜、奥さんすご〜い」

「いや、けど飽きんだよね〜。だからこうやって選ぶの楽しいわ」

「あ〜、確かに飽きますよねぇ」

ムカムカ。

なら友達を家に連れて来ないでよ。

「Aちゃんは飲んだりしないの？」

カートを押す私の隣に来て、一緒にカートを押してくれる藤ヶ谷さん。

夫婦みたいで、くすぐったい。

「あ、私はあんまり飲めなくて…」

「少しも？」

「飲んでもすぐ酔っぱらっちゃうから…」

だからみっくんに「お前は飲むな」って言われてるんだよね。

「酔っぱらったAちゃん、見てみたいな」

「えっ！」

それは今度一緒に飲もうっていうお誘い？

「…藤ヶ谷さん」

「ん？」

「私、藤ヶ谷さんの連絡先、知りたい…」

キョトンとする藤ヶ谷さん。

「…いいよ」

嫌がられると思ってたから嬉しい。

「ちょっとこっち来て」

前のほうで盛り上がっているみっくんと皐月さんから見えないように、裏側の棚へと藤ヶ谷さんに連れて行かれる。

私の携帯に藤ヶ谷さんの連絡先が入った。

嬉しくて堪らなくて、携帯を胸元でぎゅっと握りしめた。

そんな私を見て藤ヶ谷さんが笑う。

「…何ですか」

「いや、別に」

馬鹿にして。

カートに置いてある藤ヶ谷さんの手に自分の手を重ねた。

「…Aちゃんってすごい奥手に見えて、たまにすごく大胆だよね。計算してるの？」

「してません。ただ…」

「ただ？」

気持ちが押さえられないだけ。

我慢してるけど、どうしてもあなたに触りたいから。

「あ、いた」

皐月さんの声にパッと手を離した。

「振り返ったら居なかったから」

「ああ、ごめん」

何事もなかったかのように微笑む藤ヶ谷さん。

心を乱されているのはいつも私だけ。

その事実に悲しくなった。

「勝手にどっか行くなよ」

みっくんに怒られて「ごめんなさい…」って謝った。

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