『インモラル』

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「実はさ、俺もちょっと今日いいことがあったんだよね」

テーブルに置いたビールを飲み干すと、得意気に笑うみっくん。

「そうなの？何？」

「高校ん時の同級生に久々に会ってさ、また今度うちに来いよって誘っといた」

えぇ〜…。

ご飯を準備したり片付けたりこっちは結構めんどくさいのに。

家に友達を呼ぶのが好きなみっくん。

「…いつ？」

「や、別にまだ日にちは決めてないけど」

それにみっくんの友達ってなんかチャラい人が多くて、飲んだら絡んだりしてくるから正直かなり不快。

みっくんは絡まれてる私を見ても、気にもとめてくれないし。

「…ねぇ、みっくん」

「ん〜？」

「今日、出来る？」

女性からこんなこと言うのはほんとに恥ずかしいけど、早く子どもを作りたいから勇気を出して聞いてみた。

「…あ〜わりい、今日ちょっと疲れちゃってさ〜(笑)週末ならいいんだけど」

週末は排卵日じゃないのに。

「じゃあしなくていい」

「何拗ねてんだよ、仕方ねぇじゃん」

出た。みっくんの「仕方ねぇじゃん」。

「だって赤ちゃんまだって聞かれるのしんどいし」

「適当に流しとけよ」

リモコンを手に取り、テレビをつけるみっくん。

こうなるともう何を話しても空返事になるから話すのは諦めて、空になったみっくんのグラスにビールを注ぎ、ぼんやりと泡を見つめた。



土曜日は私は仕事だけど、みっくんも仕事になることが多いからちょうどいい。

けどやっぱり週末はお客さんも多くて終わる頃にはぐったりしてしまう。

ロッカーでエプロンを脱いでいると、小野さんに声をかけられた。

「北山さんっ、この間来た藤ヶ谷さん、めちゃめちゃかっこよかったですよね〜」

小野さんはフリーターで24歳。いつもキャピキャピ明るくて可愛らしい。

「ねっ！目の保養にいいよね」

小野さんと盛り上がるのはいつものことで、楽しい。

「ふふ、私携帯番号聞いちゃいました〜♪」

「えっ？」

藤ヶ谷さんそんな軽いタイプなの？ちょっとガッカリ。

「教えてくれたってことはかけていいってことですよね？」

「さぁ〜…一回かけてみたら？」

「じゃあ今かけてみますっ」

今？(笑)

休憩室の椅子に二人で寄り添って座り、小野さんは携帯をハンズフリーの状態にして、藤ヶ谷さんに電話をかけた。

プルルル…。

プルルル…。

何回か鳴らした後、『はい、藤ヶ谷です』って声が。

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