『インモラル』

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夏も終わりが近づいて、白いブラウスなら何でもいいうちの職場だから、七分袖のブラウスを買いにショッピングモールへ出かけた。

できたら丸い襟のが欲しいな。

でもなかなか見つからなくて、ネットで探そうと諦めた。

ふと、前に藤ヶ谷さんに偶然会えたカフェを見つけた。

会えるわけがない。あの日は上の書店に営業に来ていたからだし。

でもあれから一ヶ月以上経ってるから、もしかしたら来て、そのあとここに入るかもしれない。

キャラメルラテを頼んで、通路からよく見える席に座った。

けど、飲み終わっても藤ヶ谷さんは現れなかった。

…あと10分待って、来なかったから帰る。

でも10分待っても来ない。

あと10分。

それでも藤ヶ谷さんは来ない。

…あともう10分だけ。

これで来なかったら、私は藤ヶ谷さんとは絶対交われない。

諦める。

でももし来たら。

藤ヶ谷さんは、私のことがほんとは好き。

そしたら、神様が私達を許してくれて、二人は幸せになるの。

「…ふふ」

バカみたい。

そんなことは絶対にありえないのに。

来ない確率のが何倍もある。

諦めるきっかけを必死に探している私。

どうしたら藤ヶ谷さんのことを忘れられるかわからない。

あと1分で10分が経つ。

「諦めたくないよ…」

辛くて、苦しくて、テーブルにうつ伏せた。

「…Aちゃん？」

聞きたかった愛しい声に顔をあげると、心配そうな顔をして私を見る藤ヶ谷さん。

「どうしたの？具合悪い？」

「…はい、具合、悪くなっちゃいました」

嘘をついた。

だけど神様。

私の味方なんだよね？

だって藤ヶ谷さんは私のところに来てくれたから。

「困ったな…」

私を心配する藤ヶ谷さん。

「少し休んだら、良くなるから…」

「わかった」

だから、少しでいいから、側にいてください。

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