『インモラル』

3 ページ3

「あの、誤解させてしまったなら申し訳ないんですが、僕この本屋に用があるんです」

気まずそうにうちの本屋を指差すイケメンさん。

やばっ！お客さんだったんだ！

「あっ、す、すみません…」

また真っ赤になる私。

恥ずかしい…消えたい。

「いいえ」

失礼な私にイケメンさんは優しく微笑み、中へ入っていった。

裏口から入り、エプロンと名札を着けた。

バックヤードに行き、さっきLINEをくれた先輩の今井さんの後ろ姿を発見。

「今井さぁん(涙)、聞いて下さいよ〜！せっかく久々にイケメンさんに出会えたのに不審者扱いしちゃいました〜っ」

すると振り返った今井さんに「北山さん、出版社の方見えてるから！」と怒られた。

しまった！

「すみません…」

あぁ、今日きっと運勢最悪だ、私。

今井さんの向こう側を見るとなぜかさっきのイケメンさんが苦笑いしている。

「えっ！さっきのイケメンさん！？」

「北山さん！」

「す、すみません…」

「ぶはっ」

イケメンさんについに笑われてしまう私。

「すみません、この人こんなんですが仕事はきちんと出来るのでご心配なさらないで下さいね、高城出版さん」

高城出版さん？！じゃあこのイケメンさんが新しい担当さん？

「今度からこの地区の担当になりました、藤ヶ谷 太輔です。よろしくお願いします」

名刺を差し出されて受け取った。

名前までイケメンだ…。

「児童書担当の北山Aです。よろしくお願いします…」

「ちょっと売り場を拝見させて頂きたいのですが…」

「あっ、はい！どうぞ」

私が答えるとふわりと笑って店内へ消えてく藤ヶ谷さん。

「何？イケメンがどうしたって？」

今井さんが呆れた顔をして私を見た。

事情を説明すると更に呆れた顔になる今井さん。

今井さんはキツいとこあるけど、頼りになる大好きな先輩。

正直、家にいるより仕事してる時の自分のほうが好き。

家にいると赤ちゃんのことばかり考えて憂鬱になるから。

売り場に行き、商品整理をしていると藤ヶ谷さんが来た。

「今、よろしいですか？」

「あっ、はい！」

新刊の紹介や、季節の絵本などの説明を受けるもイマイチ集中できない。

この人、内心では「こんな奴に営業してもな〜」なんて思ってたりして…。

「北山さん？」

ぼやっとしてる私を不審に思ったのか、藤ヶ谷さんが話を止めた。

「あっ、すみません！」

「…ふっ」

また笑われてしまった。

4→←2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す