『インモラル』

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…生理、来ちゃった。

今回もダメかぁ。

でも不妊治療とかってよく知らなくて怖いし、今のところはまだ検査しなくても大丈夫だよね…？

ピンポーン。

「はい」

モニターを見ると宅急便の人だった。

荷物を受け取って部屋に戻り、差出人を見るとみっくんのお母さんからだった。

「もしもし、Aです」

お礼の電話を憂鬱な気持ちでかけた。

『Aちゃん？荷物届いたかしら』

「はい。ありがとうございます」

『なんかね、私が通ってるパッチワークの教室のお友達が、赤ちゃんが欲しい人によく効く御守りがあるっていうから買ってみたのよ。それとね、冷えると良くないっていうから腹巻き。夏だからって油断しちゃダメよ。あとね…』

一通り不妊によさそうな物を送ってくれたお義母さん。

早く作らなくちゃ。ヤキモキさせてしまってるんだ。

「早く赤ちゃん出来るように頑張ります」

『あっ、違うのよ？急かしてるつもりはないの。ただ何もしないよりはいいかなって』

またお義母さんに気を遣わせてしまった。

「私も早くみっくんとの赤ちゃん、欲しいです。自分が早く欲しいから頑張りたいんです。お義母さん、いつもありがとうございます。すごく嬉しいです」

『こんなことくらいしか出来なくてごめんね』

優しいお義母さんのためにも、早く赤ちゃん作らなくちゃ。

買い物へ行こうと思い自宅を出てエレベーターを待っていると、同じ階に住む横尾一美さんと出くわして、心の中でため息をついた。

「Aさん、こんにちは」

一美さんはベビーカーを覗きこみ、「ちぃちゃん、ごあいさつは？」って優しい声で言う。

赤ちゃんなのに挨拶なんかしなくない？

白けた気持ちを隠してベビーカーの前にしゃがみこみ、「ちぃちゃん、こんにちは」と声をかけるとちぃちゃんは私をじっと見つめた。

…可愛い。

羨ましいな。

「Aさんのところもそろそろですか？」

人の良い笑顔で一美さんが言う。一美さんに悪気はないのにすごく嫌な気持ちになる自分。

「うちはまだ…」

「早くAさんとママトークがしたいわ」

そう言われ、曖昧に微笑んで会釈をしたら、エレベーターが来た。

せっかくお休みの日なのに、気分はどんどん落ちていく。

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