ヤンデレ親友×藤ヶ谷 太輔 ページ8
「あ、ごめんごめん、なんか泣きそうな顔で言うから、つい」
「泣きそうなんかじゃねーし」
「そっか。でも忘れても大丈夫だよ」
「何で？」
「俺、予備持ってるから」
「は？」
藤ヶ谷は自分のロッカーから体操服を取り出すと俺に渡した。
「お前、体操服2つも持って来てんの？」
どんだけ心配性なんだよ。
そう思ったら、つい笑ってしまった。
そんな俺を見て、なぜか頬を染める藤ヶ谷。
笑われたのが恥ずかしかったのかもしれない。
「ありがとう、藤ヶ谷」
そうお礼を言うと、藤ヶ谷はまるで褒められた子どものような顔で笑った。
藤ヶ谷のジャージは少し大きくてぶかぶかだった。
だせぇ…。
着替え終わって藤ヶ谷の前に出ると、また何故だか頬を染めている。
「ぶっかぶかだわ」
俺が苦笑いすると、藤ヶ谷は優しく笑った。
｢可愛い｣
｢…は？｣
んなこと言われても嬉しくねーわ。
けど、ニコニコしてる藤ヶ谷を見てるとそんなに悪い気はしなかった。
藤ヶ谷のおかげで俺はまたみんなの輪の中に入れるようになった。
一緒に勉強したり、出かけたり。
俺達はいつも一緒だった。
今では藤ヶ谷がそばにいないなんて考えられないくらいだ。
けれど、穏やかな日々は長くは続かなかった。
「おかしいな…」
今度は藤ヶ谷の私物がちょくちょくなくなるようになった。
あまりによくなくなる。
クラスの人気者の藤ヶ谷はクラスメイトの奴らに「妬まれてるんじゃないか」とか「嫌がらせじゃねーの」などめちゃくちゃ心配されていて、次なくなったらすぐ探そうという話になり、
「…ボールペンがない」
ある日そう言う藤ヶ谷の言葉を皮切りに、みんな一斉に探し出した。
ボールペンどころか、今まで藤ヶ谷がなくしたと言っていた私物が一気に出てきた。
──俺のロッカーから。
クラスメイトの奴らに罵倒を浴びせられる。
「人のもん盗むとかどーいう神経してんだよ」
「そもそもぼっちのお前を藤ヶ谷が気にかけてやってたのにさ、感謝するどころか盗むって、マジないわ」
「そういや北山ってさ、一年とき浮いてたよな」
「え、何藤ヶ谷のこと妬んでたの？」
「黙ってないで何とか言えよ」
「つかそんなにロッカーに溜めといて何するつもりなんだよ」
俺が聞きたいくらいだ。
どうして俺のロッカーから藤ヶ谷の私物が……
藤ヶ谷のほうを見ると、戸惑った顔で俺のことを見ていた。
違う、俺じゃない…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ayachoko
| 作成日時：2023年5月9日 21時
