ぼくたちの失敗

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「先生…？」

「ん？」

恐る恐る声をかけると、意外にも受け答えは優しかった。

「あの、どうして…」

「…ああ、Aの悲鳴が家まで聞こえてきたから、何かあったのかと思って」

小泉さんがいきなり出てきた時だ。

そんな大きい声を出しちゃってたんだ…。

「す、すみません。小泉さんが突然出てきたからびっくりしちゃって」

「小泉さんって今日来てた患者さんの？」

「…はい」

「何しに来たの？」

「あ、なんかお菓子を私にくれたんです」

「Aだけに？」

「はい…」

「…」

考え込む先生。

「太輔、Aさん大丈夫だったの？」

そこへ奥様がみえて、エプロン姿で心配そうに私を見た。

「患者さんにストーカーされたみたいだよ」

「まあっ…」

「あ、いえ、そんな大したことじゃ…」

「大したことだよ。だから早く一緒に暮らしたいって思ってるんだけど」

「え？あなた達、お付き合いしているの？」

「うん」

先生の突然の告白に驚いて、二人のやり取りについていけない。

「遅くに帰るのが心配でさ。だから一緒に暮らしたいなって」

「あらあら、そうなの？ふふ」

奥様が嬉しそうに笑ってくれて、私は安堵した。

「うちはお部屋も余っているし、いつでも来てくれて大丈夫よ」

どうしよう、もうこれで「一緒に暮らせません」だなんて言えなくなってしまった…。

「ありがとうございます…」

「まあ色々準備もあるだろうし、すぐにじゃなくてもいいから」

先生はそう言うと私の肩を抱いた。

「そうね、私ったら嬉しくてつい」

恥ずかしそうにする奥様が可愛らしくて、私も微笑んだ。

「あ、そうだわ。良かったらAさんも一緒にお食事どうかしら？」

「えっ…」

「皆で食べたほうが楽しいし。帰りは太輔が送ってあげたら？」

「そうだね、じゃあいこうか」

先生が私の手をとり、歩き出した。




リビングに入ると、中には院長先生と北山さんが楽しそうに話していた。

私と太輔先生がお付き合いしていることを奥様が嬉しそうに話し、院長先生は驚きつつも笑顔で受け入れてくれた。

「お二人はお付き合いされてるんですか」

北山さんがそう言うと太輔先生は「結婚を前提にね」と付け加えた。

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