ぼくたちの失敗

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『小泉さん、次回は2週間あけていいよ』

インカムから太輔先生の低い声が聞こえて、脳が痺れた。

「、はい」

先生方とのやり取りは、基本インカムでしている。

太輔先生の声が耳からダイレクトに響き、それだけでドキドキしてしまう。

…一緒に暮らすのなんて絶対無理。

ため息をついていると治療を終えた小泉さんが、待ち合い室に戻ってきた。

会計処理をして診察券を返したのに小泉さんは帰らなくて。

「小泉さん？どうかしましたか？」

「あ、いえ。すみません」

何だか煮え切らない様子で帰っていった。

もうすぐ19時。受付を締める準備を始めた。

「石原さん」

院長先生に話しかけられて背筋がピンとのびた。

「は、はい」

「食事会の場所は決まったかい？」

「あ、はい。出欠も取れました。皆参加できるみたいです」

うちの歯科医院は親睦会と称して、2、3ヶ月に一度食事会を開いている。

出欠やお店の予約は受付がやることになっている。

来週それがあり、前回は参加できなかった私は今回が初参加。

「そうか、それは良かった」

院長先生は自分の担当の患者さんは終わったから、自宅へと続いている裏口から出ていった。

それから、太輔先生の担当した患者さんの麻酔の効きが悪く治療が少し長引いた。

ようやく終わったのは20時近く。

下駄箱で靴に履き替えて、なみちゃんと話ながら階段を降りていく。

「私、今日はお母さんに送ってもらったから」

なみちゃんはそう言って、なみちゃんのお母さんの車に乗って行ってしまった。

歯科医院の駐輪場に停めてある自分の自転車の鍵を外していると、いきなり小泉さんが現れた。

「きゃあっ」

突然だからびっくりして大きな声を出してしまった。

「あ、あの、驚かせてしまってすみません…」

小泉さんが謝るから私も大袈裟に驚きすぎたことを謝った。

すると小泉さんはバックからお菓子を出して私に差し出した。

「これ、良かったら…」

「あ、ありがとうございます…明日また皆でいただきますね」

「いえ、あの、石原さんにだけあげたいんです…」

私だけ？何で？

なんとも言えないような気持ちになったけど一応無理矢理微笑んで、お菓子を受け取った。

すると小泉さんが一歩近づいてきたから、思わず一歩下がる。

「石原さんっ、あのっ…」

「お待たせ」

声に振り返ると、そこには北山さんがいた。

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