ぼくたちの失敗

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「でも、ちょうど見せたいものもあるし、来て」

太輔先生は先にソファから立ち、私の手を取った。

「太輔、せっかく皆さん来てくださってるのに…」

奥様の言う通りだ。

「そうよ、ねぇ、Aさん」

そう言って私を見つめる由宇さんの瞳は「今出てくのはよくない」と言っているようだった。

「はい…」

ソファのほうへ戻ろうとすると、浩輔さんが私を太輔先生のほうへ押しやる。

「わっかんないかなぁ？こんなおばさん達の話なんかつまんないんだよ。花がどうこうとか。二人きりでイチャイチャしたいに決まってんじゃん。邪魔すんなよ」

この人、何言ってるの？！

唖然としてると奥様が「そうよね。もう紹介はできたし後は二人で過ごしてきて」と微笑むと私に背を向けた。

そうじゃない。

浩輔さんの言葉を否定したいけど何も言えなかった。



リビングを出て、らせん階段をのぼる太輔先生の後をついていく。

ぼんやりと先生の足を見ているうちに、いつの間にか3階に着いていた。

「どうぞ」

先生が扉を開けてくれたから、先に中に入った。

扉を閉める太輔先生の背中に向かって話しかけた。

「すみません…、私のせいで太輔先生にまで嫌な思いをさせて」

振り返ると太輔先生は優しく微笑んだ。

「全然嫌な思いなんかしてないよ」

太輔先生は私の頬に手のひらをそえて「よく頑張ったね」と言ってくれたから、堪えていた涙が出てきた。

もっと上手く立ち回りたかった。

太輔先生に釣り合うくらいの素敵な女性だったら良かったのに。

教養も何もない自分はあの場にはとても不釣り合いだった。

「別に俺はAが母さん達に気に入られなくても全く気にならないよ。Aもそんなこと気にしなくていいから」

そんなわけにはいかないのに…。

けど抗議する勇気はないから黙った。

「…泣いてる顔見ると、昨日のA思い出しちゃうな」

雰囲気が甘いものに変わったことに気がつき、慌てて離れた。

とてもそんなことをする気分にはなれない…

そう言おうとするよりも先に唇が重なる。

そして熱い吐息と共に舌が遠慮なく入り込んできた。

密着する身体を必死に捩って離れようとしたけどあまりの深いキスに軽く酸欠状態で力があまり入らない。

散々好き勝手に口内を侵され、ようやく解放された頃には頭がクラクラして膝から崩れ落ちた。

そんな私を満足げに見下ろす太輔先生が怖くて後退りをしたけど、あっさり捕まってしまった。

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