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もうだめだ。
彼を止める術をもたない私はぎゅっと目を瞑った。
頬に涙が伝う。
「…A」
先生の哀しげな声が聞こえてそっと目を開けた。
…まただ。
こんなにも私を怖がらせるくせに、私を見るその目はいとおしくて仕方ないといった瞳。
太輔先生が、わからない。
ブーッ、ブーッ、
その時、携帯のバイブ音が鳴り響いた。
どうやら鳴っているのは先生の携帯みたいだ。
画面をぼんやりと見つめる先生。
その隙に軽く服を整えて起き上がった。
もう一度先生のほうを見ると、彼がこちらを向くから身体に緊張が走った。
「…帰るよ」
「えっ…」
立ち上がり玄関へ向かう先生を慌てて追いかけた。
靴を履く先生の背中に声をかける。
「先生…、あの、」
振り返った先生の顔はとても歪んでいて、自分が傷つけてしまったんだと思った。
私の腕を引っ張り抱き締めた先生が「ごめん」と呟いた。
その声は、震えていた。
私から離れ、先生は玄関の外へ出ていった。
どうしよう…
嫌われた?
心臓がバクバクいっている。
追いかけたほうがいいのかな。
頭がぐちゃぐちゃでどうしていいかわからず、立ち尽くしていると「Aちゃん」と声をかけられて、振り向くと北山さんがいた。
「あっ…、すみませんでした」
変なことに巻き込んじゃったよね。
「大丈夫?」
「…え?」
「なんかすごい悲しそうな顔してるから」
心配そうに聞かれて、安心したからか急に気持ちが溢れだした。
涙が止まらなくて、しゃがみこむ。
「怖かったな」
ふわりと私を包み込む北山さんの優しい声が頭上から聞こえた。
「…早く別れたほうがいいよ」
北山さんの言葉に驚いて顔をあげた。
涙を親指で拭うと、北山さんは真剣な顔をしてこう言った。
「藤ヶ谷先生は、今はなんとか自分を抑えてるみたいだけど、きっとその内抑制できなくなる。そうなる前に離れたほうがいい」
離れる…?
「簡単にはいかないだろうけどな。仕事も辞めたほうがいいよ。出来るなら引っ越しして藤ヶ谷先生から離れて…」
「ちょっと待って下さい…」
どうしてそんなことしなきゃいけないの?
「私…藤ヶ谷先生と別れたく、ない」
「え?」
「さっきは確かに怖かったです…。けど、先生は私をすごく心配してたからだし」
「それは違う。心配してたんじゃない。Aちゃんが自分の思い通りにならないと気に入らないだけだ」
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ayachoko(プロフ) - mayumitsuさん» はじめまして(*^^*)…ですが、mayumitsuさんの作品を実は読んだことが何度かあるので何だかはじめましてな気がしません(笑)一気に読んでくださってありがとうございます(。>д<)サイコパスな藤ヶ谷くんを観たいですよね(*≧∀≦*)コメントありがとうございました(*^^*) (2018年12月21日 16時) (レス) id: dab39b035a (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - 玲さん» 玲さん〜(;∀;)いつも本当にありがとうございます…!!このままドロドロ作者として突っ走っていきます(笑)ほんと藤ヶ谷くんにぜひまた野島作品に出てもらいたいですよね(*≧∀≦*)励ましのコメント、ありがとうございました(*^^*) (2018年12月21日 16時) (レス) id: dab39b035a (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - くまのこさん» くまのこさん、はじめまして(*^^*)ええっ、ほんとですか(;∀;)嬉しいです〜(。>д<)更新通知が私の作品でガッカリしてる人多いだろうなと更新する度にいつも思っていたので(;_;)優しいお言葉ありがとうございます!更新頑張ります(*≧∀≦*) (2018年12月21日 15時) (レス) id: dab39b035a (このIDを非表示/違反報告)
mayumitsu(プロフ) - はじめまして。すごく惹き込まれるお話で朝から一気読みしちゃいました。サイコパスみな藤ヶ谷先生にめちゃくちゃゾクゾクします…!リアルでもこんな役の藤ヶ谷さんが見てみたくなりました。更新楽しみにしています(^-^) (2018年12月21日 8時) (レス) id: 98d98b9cc2 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - ayachocoさん!そんな風に思わないで下さい!暗くてもドロドロでも、ayachocoさんの作品が大好きな人は沢山いるでしょうし、私がその中の一人ですから。野島作品に是非うちの藤ヶ谷さんをバンバン起用して欲しいものですよね!絶対イイ芝居するのになぁ〜! (2018年12月20日 20時) (レス) id: b7c4bcac2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayachoko | 作成日時:2018年5月25日 22時