ぼくたちの失敗

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北山side

「どうすっかな…」

Aちゃんの肩を支えて悩む。

あのくらいの量でこんなに酔うか？普通。

とりあえず送ってやらないと。

Aちゃんの頬を手のひらで軽くペチペチと叩いた。

「おーい、Aちゃん。帰るぞ」

その手のひらを掴むとAちゃんはふにゃっと笑って「はぁ〜い」と返事した。

いつも医院で見る硬い表情とは違って安心しきったような年相応の幼さを見せてくれて嬉しい。

タクシーをつかまえて、Aちゃんの自宅の住所を聞き運転手に伝えた。

意識はあるけど泥酔い状態の彼女を一人にするのは心配で、俺も一緒にタクシーに乗った。

一緒に乗って良かった。

無防備にタクシーで目を閉じるAちゃん。

タクシーの運転手と二人にするのは心配だ。

…俺、こんな過保護だっけ。

いや、Aちゃんが危なかっしいせいだな。

Aちゃんが告げた住所に着き、彼女を支えながらタクシーを降りた。

「何号室？鍵は？」

俺の問いに夢うつつな感じで答えるAちゃん。

つか、支えながら鍵だすのムズいな。

鞄を落としてしまい慌てて拾うと、鞄から飛び出てしまったAちゃんの携帯がバイブ音を立てた。

画面には＜藤ヶ谷先生＞と出ている。

彼氏なのに苗字登録かい。

出るわけにはいかないから鳴りやむのを待ってから拾うと、また着信がきて驚く。

それからも何度か携帯かバイブ音が鳴り響いた。

着信件数の多さから、少し前からずっとかけていたみたいだ。

…出るまでかけてんの？

ずっと電話に出ないのは確かに気になるのかもしれない。だからってこんな頻繁にかけるか？普通。

この間、院長室から見えた二人。

はじめは「何勤務中に窓開けていちゃついてんだよ」って思ったけど。

怯えたような顔のAちゃんが、父親に怯えていた頃の母親の顔と重なった。

なんか、いいようにされてんじゃねぇの？

あの先生も爽やかそうにみえて意外に粘着質だったりして。

震え続ける携帯を鞄に突っ込み、部屋の鍵を開けた。

ベットに寝かせるとすーすーと寝息をたてて眠るAちゃん。

これでひとまず安心。

…鍵、閉めないといけないよな。

Aちゃんの肩をポンポンと叩いて「鍵、ポストに入れとくから」と言い立ち上がろうとしたら、突然ぎゅっとくっついてきた。

「ちょ、」

離れようとした時。

ピンポーン。

警告するかのように、彼女の家のインターホンが鳴った。

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