ぼくたちの失敗

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先生の顔が近づいてきたから私は身体を反転させた。

すると先生が後ろからぎゅっと抱きしめてきた。

私の左頬を大きな手のひらで包む。
だから私は顔だけ後ろを向く形になった。

再び先生の唇が近づいてきて、私は先生の手首を掴み慌てて顔を背けた。

「…A」

責め立てるような声色。

怖くて先生の顔は見れない。

院長室の窓を再び見ると、北山さんが驚いた顔をしてこちらを見ていて、顔が一気に熱くなった。

先生は今度は私の両肩を掴み、無理矢理自分の方へ私の身体を向き直させる。

「せ、先生…、ダメです」

「ダメなのはAのほうだろ」

返ってきた先生の鋭い声に強張る身体。

顎を掴まれ強引に上を向かせられた。

私の唇を伏し目がちに見る彼の妖艶さに背中がゾクリとする。

恥ずかしいのと怖いのとどうしたらいいかわからない気持ちがグチャグチャになって、視界が滲む。

「約束したよな、アイツに愛想はふらないって」

震える私の唇を指でなぞりながら抑揚のない声で聞かれた。

「…っ、先生…、怒ってますか…？」

「別に」

冷たく言い放つと先生は無遠慮に唇を重ねてきた。

何とか離れようと右手を泳がせると、先生の左手に捕らえられて指を絡まされた。

されるがままに何度も角度を変えて押し付けられる柔らかくて熱い唇に翻弄される。

何とか酸素を得ようと唇を少し開くと、まっていたかのように舌が入ってきた。

「ふっ、んん、」

いつもの優しく甘いキスではなくて、侵食されていくようなキスにこらえていた涙が頬を伝う。

膝の力が抜けて座り込んでしまう私を、彼は冷たい瞳で見下ろす。

「ご、ごめんなさい…」

いつもの先生に戻って欲しい。

優しく微笑んで欲しい。

そう願って震える声で謝った。

けれど無反応の彼。

恐る恐る見上げると、先生は窓の向こうをじっと見据えている。

途端、バンッと窓を勢いよく閉める。

その音に身体が跳ねた。

やっぱり、すごく怒ってる…

「約束、守れないような子は嫌いだな」

嫌い、という言葉にふられるんじゃないかと不安になって。

先生に手を伸ばすけど振り払われてしまう。

扉へ向かって歩き出す先生に慌ててもう一度謝罪した。

「あのっ、ほんとに…ごめんなさいっ…」

私の謝罪も虚しく、先生は振り返ることなく扉は無機質な音を立てて閉まった。

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