ぼくたちの失敗

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「ちょうどいいじゃないか、この場でみんなに報告したらどうだ？太輔」

お酒がまわったのかいつもより更にご機嫌な院長先生がそう言った。

「…はい」

私のほうに気遣うような視線を向ける先生。

みんなに付き合ってることは知られたくない、と話したからだと思う。

けれど来週からは一緒に暮らすことになっているし、隠し通すのはもう無理だよね。

二階堂さんがあんな大きな声で言ってしまったからもう報告したことになってしまったけど。

「ほんとはこんな形で伝えるつもりではなかったんだけど」と前置きをしてから話す先生。

驚かせてしまったことを詫びたり、色々迷惑かけるかもしれないけれど温かく見守ってくれたら嬉しい、と誠実に話す先生にスタッフはみんな好意的な眼差しで頷いた。

ただ一人、なみちゃんを除いて。

なみちゃんにだけは先に話したかった。

けどここ最近は色々バタバタしていたし、なみちゃんにゆっくり話せる時間もなかった。

一緒に暮らすことになったのもこの間いきなり決まったわけだし。

太輔先生の話が終わり、またみんな飲み始めたから、私はなみちゃんの隣に座った。

「なみちゃん…」

少し責めるような瞳で見られてドキッとしたけど、なみちゃんはすぐ笑顔になった。

「もー、びっくりした！憧れてるだけってついこの間言ってたのに一緒に暮らすとか、結婚考えてるとかさ〜」

「ごめんね、なんか言いづらくて…」

「友達なのに？」

こんなことを言うのは間違っているけど、例えば二階堂さんと付き合っている、とかならすぐなみちゃんに話したと思う。

けど、太輔先生と自分はあまりに釣り合わない。

実際、太輔先生には愛想よくおめでとうございますと言っている他のスタッフさんも、時折私の方をチラチラと見てきて、視線が合うと逸らされてしまう。

患者さんやスタッフから絶大な信頼感と人気のある先生と、いつも自信なさげでミスの多い私はかなり異色な組み合わせだ。

院長先生や奥様は本当に歓迎してくれているのかな。

ほんとは浩輔さんみたいに思われていたりして…

下を向いて黙ってしまっていた私に優しいなみちゃんは慌てて「でもおめでとう！これからは何でも相談してよね！」って肩を寄せてくれた。

「うん、ありがとう…」

「私も北山さんと上手くいくといいんだけどな」

そう聞いて胸がドキリとした。

そうだった。
なみちゃん、北山さんのこといいって言ってた。

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