やったれ霊媒師 ページ43
＜尾形目線＞
｢牛山ぁ…暇よ｣
｢お前なぁ…ちったぁ逃亡中って事を自覚しろよ｣
また馬鹿なAが緊張感が無い言葉を呟いている。まぁ、俺なら普段通り無視するから、今回は牛山に行ったか…。
俺達は江戸貝邸を襲撃され、土方と二手に別れた後に、山を通って網走に向かっていた。途中、休憩としてこの場に留まっているだけだ。俺は基本誰も信用してないので、いつも通り銃を常に肌身離さず持っている。あの杉元と違ってな……杉元と言えば、先日アシリパにあんまりにも付きまとってるからついお前は犬か？って聞いたな。
あの後殺し合い寸前まで発展して牛山に止められたなぁ……あんなんだから上官殴って何もかもパァにするだ。
｢……はぁ｣
｢あ？尾形てめぇ…｣
｢ため息吐いてると幸せ逃げちまうだろうが！｣
なんだこいつ。マジで頭少女脳だな…本当にあの‘不死身の杉元’かよ…。そんな視線を送ってると、アシリパが近くに居るので頭に手を置かれ、握り潰されそうになるまで持たれた。アイアンクローしてんじゃねぇよ、殺すぞ。
｢殺すぞ｣
｢これでも考慮してんだよ…ありがたみを感じろ｣
｢ははっ、無理だな｣
そこから、手は離れ、俺はヤマシギを獲りに、杉元は知らん。
ヤマシギは案外近くにいた。かつて鴨を取っていたように、俺は銃を構え、息を潜めていると
｢さぁ、兄様！俺に兄様のかっこいいところを見せて下さい！｣
突然なもんだから、つい音を立ててしまい、ヤマシギが逃げてしまった。成程、あれが蛇行しているヤマシギか。
｢勇作殿……うるさいですよ｣
｢そんなぁ…！！では、見守っていることにします！！｣
何故Aはこの人を除霊なり何なりしないんだ。助けてくれた事は嬉しいんだが、これはどうにかならんのか…？
結局、三羽しか獲れなくて、それで戻ると罠で二羽しか獲れてなかったので、俺の方が凄いと証明出来た気がした。
｢流石兄様！！素晴らしい腕でしたよっ｣
｢ちょ、突然大きな声出さないでよ…｣
｢そうですよ、貴方がうるさかったので手元が狂ってしまった時もありました｣
｢酷いですね兄様！！そんな兄様も凛々しい……｣
｢何だお前ら……二人して何やってるんだよ｣
杉元達が呆れたように聞いてくる。こいつら、まさか勇作殿が見えてないのか？
すると、Aが勇作殿の事を喋ろうとしたので、咄嗟にAの口を塞ぐ。
何故だろうか？この男にだけは知られたくない。
まぁ、Aは別に良いんだがな…。
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作者名：文揚げ | 作成日時：2021年10月4日 17時
