食後の運動[弐] ページ41
＜東谷目線＞
私達が外に出るのと同時に、バン！と扉が開けられた音がした。玄関が突破されたのだろう。
｢いけいけ！二階の狙撃兵を倒せぇ！！｣
嘘、この声は二階堂の…？
まさかもう復帰していたとは、驚きだ。鶴見に捕まりそうになった後から尾形に聞いたのだが、二階堂は鶴見と何か話した後に、手当てされていたらしい。尾形の話では、大方杉元への復讐心を利用されているとの事。にしても、もう動けるまで回復したのか。
その後、私達はその場を離れ、土方達と合流。二手に別れて網走で合流しよう、と決めた。私は、尾形、杉元、牛山、アシリパと共に行き、残りは土方とだ。山の方向に走り、追手が来ない場所まで辿り着いた。
大体川付近、取り敢えずそこで休憩することになった。
｢見ろ杉元、トゥレッタチリが居る。ヤマシギだ｣
｢ヤマシギ…美味しいのかしら｣
｢あぁ、脳ミソが旨い｣
脳、ミソ？
え、アイヌは脳ミソを食べるの？私は遠慮しておきたい。アシリパのアイヌ知識が披露される中、尾形が銃を構えると、アシリパに制されていた。
｢なんでだよ、食うんだろ？｣
私は、その言葉が普段の彼からすると、素の、純粋な疑問の言葉だと感じた。普段の尾形は、まるで答えが分かりきっているかのように、疑問と言う形であるが、確認しているのと同じな印象だったのだ。尾形の中で、答えが決まっており、それの確認。そんな風な感じだ。でも、今のは単純な疑問と言う雰囲気だった。
｢ヤマシギは蛇行して飛ぶので、その銃じゃ一羽に当てたとしても、残りが逃げてしまう｣
｢だから、罠を仕掛ける。罠ならば皆の分も取れる！｣
｢……」
それについて尾形は答えず、髪を整える仕草をしてから後ろを向いてしまった。
なので私は
｢百さぁ〜ん、ねぇ今どんな気持ち？ねぇ今どんな気持ち？｣
｢アシリパちゃんに諭される子供みたいな百さんの気持ちが知りたいわぁ〜｣
｢えっげつねぇな…｣
杉元から何か聞こえた気がしたが無視する。こんな絶好のチャンスは早々無い。いつも馬鹿にされているので、そのやり返しなのだ。
｢………｣
｢あれれ？答えてくれないのかしら〜？｣
あ、青筋。これは結構怒ってますね。そろそろ遠慮しないと殺されそうなので止める事にした。きっと今度十倍に返して何かされそうだ。
まぁ、今回は完全に尾形が悪いんで、十倍で返して来たなら二十倍にして返すまでだ。
｢何か悪どいこと考えてる顔してんなぁ…｣
｢うっさいわよ、牛山｣
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作者名：文揚げ | 作成日時：2021年10月4日 17時
