男達の受難 ページ39
＜杉元目線＞
｢取り敢えずさぁ……誰か聞いて来ない？｣
｢なら白石、お前が行けよ｣
｢そうだなぁ、俺は興味無いから遠慮しておくぞ｣
所謂言い出しっぺの法則とやらだ。俺、キロランケは白石が聞いてくる事に賛成するが、牛山や土方は違った。
｢いや、白石は失敗しそうだ…｣
｢なんなら、そのまま俺らの会話をバラしちまうかもしれんぞ｣
この会話は女人禁制の会話だ。
稀に白石と牛山は趣味嗜好で話が通じるから尚更だ。対して土方は
｢まず、聞くのではなく様子を見てみるのはどうだ｣
と、他の意見を出す。
尾形は我関せずを極めていた。一応、一番関わってるのはお前なんだぞ、このクソ尾形…。
アシリパさんとは違った、大人の女性。それだけで何だか意識が凝り固まって変になる。オソマ！なんて言ったら、きっとあの東谷の事だ。気が強いから殴られるんだろうなぁ…。
｢でもさぁ、まずなんでAちゃんは北海道に来たんだろうか…？｣
｢確かにな……嬢ちゃん、刺青人皮も全く知らなかったもんなぁ…｣
｢は？東谷は、刺青人皮の噂を嗅ぎ付けて来た訳じゃねぇのか？｣
思わず俺は聞き直してしまった。北海道で、尾形や土方に関わってるなら少なくとも金塊目当てだと思っていたが、牛山曰く最近この刺青人皮の事を知ったらしい。嘘だろ？と疑いたくなった。
｢尾形なら何か知ってるんじゃあないのか？｣
キロランケがそう呟き、全員の視線が尾形に集まる。尾形はため息を吐いた後
｢……あいつは全国各地を旅して回っていた占い師兼霊媒師だ。北海道は最後の地として来たらしい｣
｢つまり、この金塊争奪戦に偶然巻き込まれた不運な霊媒師って訳さ｣
｢｢｢めちゃくちゃ運悪ぃじゃねぇか｣｣｣
同情してしまうのも無理はない。南無南無……って、これはお経だったか？
｢あら、何の話をしているのかしら？｣
すると、鍋を作り終えた東谷が扉の前に居て、こちらの様子を探ってくる。
｢イエ、ナンデモアリマセン！！｣
｢そう、なら良いの……鍋完成したわよ｣
｢鍋！杉元、食べよう！｣
｢私のお腹の音もそろそろ動物の鳴き声位になってきてしまった｣
｢アシリパさん…｣
今まで何処に居たの？と聞きたくなったがそれを押さえ、机の上に鍋を起き、椅子に座る。真ん中がアシリパさんだ。
｢｢｢｢｢｢｢｢いただきます｣｣｣｣｣｣｣｣
｢…｣
尾形以外は全員、食事の言葉を述べ、椀に鍋の具を入れていく。なんこ鍋と言うらしい。馬の腸を煮込んだものだった
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作者名：文揚げ | 作成日時：2021年10月4日 17時
