チキチキ！ヤクザレース！ ページ29
＜東谷目線＞
変な老人との出会い(？)を終えてもう暫く待っていると、尾形が妾の家から出てきては
｢お前はにしん番屋にいけ。俺は櫓から狙撃する｣
相変わらず展開が早いの何の。意味が分からないので追及しようとすれば、尾形は走り出していて、一人取り残されてしまった。
｢にしん番屋、ねぇ……｣
仕方無いので近くに居た馬野郎の手下に案内させていると、近くで銃声や爆発音が聞こえてくる。
成る程、尾形の言っていた事を漸く理解した。女将を見つけるために、目的の物を見つけるために、とにかく番屋へ急ぐ。すると、案内させていた手下が撃たれた。私は即座に物陰へ身を隠すと、三人の男が居て、撃ったのはその内の一人だと分かる。
｢面倒ね…！！｣
｢先程の女を探せっ！あの男と一緒に居た女だ！｣
どうやら、こちらの事はバレているらしい。尾形め、だから目立ちたくなかったのだ。
行動しといた方が良い、と判断した私は物陰から物陰へと、追手を掻い潜りながら先へ進む。しかし、三人の追手は、三手に別れて捜索し始めた。難易度上がってないか？
物陰から物陰へ行こうものなら、そのまま銃で天に逝く事になる。それは嫌なので、一か八か、銃声が激しい方へ走り出す。
｢居たぞ！追えっ！！｣
｢死んでたまるもんですかっ｣
とにかく、今は走るが吉だ！！
＜尾形目線＞
俺は妾の家で妾の死体と、44-40ウィンチェスター弾を見付け、即座に目的の人物のものだと察した。
馬吉等に指示を出しながら家の前に待たせているAの所に行き、今から始まる抗争では安全と言えるだろう番屋へ行けと指示を出す。困惑していたがお構い無く俺は走る。
目指すは櫓だ。高所からの狙撃なら負けねぇ。
床屋の前、つまり交換が行われる場所が見える位置の櫓に登り、拾おうとする女将の腹を撃つ。
見えたのは口紅をしたジジィだった。
｢ははっ、やっぱジジィの変装だと思ったわ｣
口角が上がるのを抑えられん。
さらに、馬鹿な日泥の野郎はそれを拾おうとする。だから手の甲を撃ってやり、馬吉らに命令を出す。
けれど、どれも失敗に終わる。
｢まぁ、博打とハッタリで生きてきたヤクザがまともに戦える訳ねぇか…｣
｢おい、前線の馬鹿共に伝えろ！通りを斜めに横切るな！！｣
｢敵の銃撃に体を晒す時間が長くなる、遮蔽物の間を最短距離で移動しながら前に進めっ！！！｣
まともに戦えない奴へのシンプルな指示だ。
まぁ、精々馬鹿共は俺の計画の“駒”にでもなってもらおうか。
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作者名：文揚げ | 作成日時：2021年10月4日 17時
