これは貴方じゃない ページ12
＜東谷目線＞
「行くわよ黒子(ほくろ)軍人っ」
「なにその呼び方!?」
「宇佐美だっ!取り合えず、百之助は窓から出た!このまま窓から追い掛けるよ!」
土足でベッドを足蹴に窓から外へ尾形上等兵を追い掛けに行く。後で軍医さんに謝らないといけなくなった。
私と宇佐美は手分けして探す事にした。取り合えず一時間程探し、時間内に見つければ先程の病室に、見つからなくても一旦は戻るように決め、捜索を開始した。
全く、手間がかかる依頼を受けてしまったものだ！
＜宇佐美目線＞
なんなんだ、あの失礼な女は…！鶴見中尉殿は何をお考えなんだ。僕は鶴見中尉殿に花のよう、繊細に扱えと言われたから優しくしてやったというのに……！それに、百之助はどうしたんだ?まるであれは勇作殿のようだった。
あの女は‘憑依’って言ってたけど、そんな非科学的な…。でも、鶴見中尉殿は信じているみたいだから、信じてやろう。今は百之助が先だ。
「百之助〜、今出てきてくれたらとっておきの鶴見中尉殿の写真あげるよ〜！」
鶴見中尉殿の写真だ。出てくるに決まっている。
…………しかし、百之助は出てこなかった。そりゃもう、気配の一つもしない。
「…ぜってぇ泣かしてやる」
覚えてろよ、百之助ぇ！
＜尾形(勇作)目線＞
あぁ、兄様の体、兄様の声！
これを俺が自由にしているんだ。興奮する…。この際、この顎髭を剃り、兄様の魅力を更に引き出そうか？それとも、兄様のお写真を撮ろうか？
何にせよ、兄様の体を好きに出来、且つ幽体でない為体温を感じれるんだ。暫くは、このままで居たい。
兄様、兄様…勇作の名前を呼んで下さい。
勇作は、ずっと兄様の側に居ました。
だから…名前を呼んで下さい。
「……あ」
兄様の声が、俺の意思で出てくる。
それは、それで名前…俺の名前行っても、只々俺が名前を言っているだけでは？俺の意思で俺の名前を言うのだ、只、声が兄様なだけで…それは、兄様じゃない。
「あに…さ、ま？」
あぁ、これは俺だ。兄様が言っている訳じゃない。
愛しい兄様の声なのに、体なのに、兄様じゃないんだ。
どうして、兄様じゃないのか。兄様は何処に行ってしまったんだ？兄様？
「あ、アぁああああああアアあああ！！！？」
兄様、何処に行かれたのですか？
今、俺が探しに行きます………。
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作者名：文揚げ | 作成日時：2021年10月4日 17時
