霊感はあって困るものじゃない ページ2
北海道、それは日本列島の北側に位置し、広大な土地と寒冷な気温が特徴とも言える。
そこへ足を踏み入れるは、整った日本人の顔付きに、時代が時代の為、そこそこに大きな身長。肩甲骨辺りまで伸ばされた艶やかな黒髪。十人中七人は振り替えるだろう容姿をした女性だ。
名を 東谷Aと言う、日本を旅する霊能師だった。
そんな彼女は、後にこう語る
「時期が悪かった」
＜東谷目線＞
私は遂に、旅の終わりに行くと決めていた北海道へたどり着いた。その嬉しさと言ったら、言葉では言い表せない程である。思わすその場で跳んでしまった。…恥ずかしくなった。
ふと町へ行くと、活気があると確認させられる。寒さなんて慣れてしまったように何ともない。
ふと甘味処を通り過ぎる際、私は視線を奪われてしまった。最初は驚き、次に吐き気だ。原因は、十中八九そこに居る軍人だろう。
原因の軍人は、私の視線に気付くと付き添いの低身長の軍人に一声かけると此方に歩いて来る。そして口を開けば
「これはこれは…麗しき御婦人に注視されるとは、良い気分になりますなぁ!」
「して御婦人、私に何かご用かな?」
独特な、しかし堂々とした喋り方で私に問う。軍人は私よりも身長が高く、額に白い額当てを着けていた。町中でも目立つ部類だ。でも、目を奪ったのは、それではない。
その軍人の背後に並ぶ霊魂だ。恨み等からではない、執着。信望や恋に近いだろう。そんな霊魂が、正に長蛇の列なのだ。
更に、霊魂の一部の目がイッちゃっている。正直、異常な光景だ。思わず私は
「随分と、慕われているわね……異常で、狂っている程に」
と、言ってしまった。
気付いた時には既に遅い。目の前の軍人は口元に弦を描き、興味深そうな双眼で私を射抜いていた。
「大変興味深いですなァ……御婦人、私と少しお茶をしませんか?」
「勿論、奢りですぞ」
「け、結構よ…奢らせるのも悪いものね…」
断ろうと出てくる言葉はたどたどしい。この軍人は危険な気がして儘ならない。
軍人の背後の霊魂も物語っている。一度、懐に入ってしまえば、二度と戻れないｯ!
私が踵を帰そうとしれば、右腕に掴まれた感覚が走る。異常な軍人に腕を掴まれた事を理解するのにそう時間はかからなかった。
「月島軍曹ォ!お茶をご用意しろぅ!!」
甘味処で、待機していた月島と言う軍人は、目の前の軍人の指示を即座に実行し、私は逃げる隙を失ってしまった。
彼の顔は、とても不気味な笑みであった。
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作者名：文揚げ | 作成日時：2021年10月4日 17時
