偶然ですか？

ご近所さん sideK2 ページ27

「ご飯どうします？」

自分で言ってから気づいた。
あ、俺、料理得意じゃねえ。
いや別に、外に食べに行けばいいんだよな…おすすめのお店にでも連れて行ってもらおうかな？

「風磨くん、この辺にいい店とかありません？」
振り向いて相手の顔を見た瞬間、忘れかけていた熱が一気に戻ってくる。
風磨くん、近い！！

…さっきもそう。
返事がないから振り向いた。
そしたら、俺を見ていた。
めちゃめちゃかっこいい顔で。

どうして俺を見ていたのかはわからないけど…
俺を見つめる風磨くんの顔が、至近距離で、惚れそうなほどに美しくて。
綺麗な人だな、とは思っていたけど、心臓が口から出そうなくらい飛び上がったのは初めてだった。


まだ鳴りやまない胸を、必死に深呼吸で押さえつける。
落ち着け、俺。
なんでこんなに動揺するんだ？
至近距離で風磨くんの顔を見るのは初めてじゃないはず。
ほら、最初に会った日にだって…。

ああ、ダメだ、落ち着いてくれ、俺。
風磨くんは、
…男だ。


もう一度深呼吸して顔を上げると、風磨くんは俺の様子には全く気づいていないようだった。
「いい店？…んー…」
「あ、ほら、そば屋さんとか！」
「そば？なんで？」

え、だって、引っ越しそばって言わない？

「ああもしかして、引っ越しそばのこと？」
おお…エスパー。

それそれ、と頷くと、風磨くんはちょっと呆れたように言った。
「あのね、引っ越しそばってのは、本来は引っ越してきた人がお隣さんとかに配るものなんだよ。『蕎麦』と『そばにいる』をかけてんだよな。」

「…へえええ！！そうなんですか！？」
何それ知らなかった。
年越しそば的なアレかと思ってた。
…風磨くん激かっこよい。


「つうか、中島なんか作ってよ。手料理〜。」
「て、手料理！？」
突然のおねだりに、思わず声が裏返る。

「おお俺、料理苦手で！ていうか、食材とか何にもないですし…！？」
「え、料理苦手なの？好きそうなのに。」
よく言われる。
なんか嫁にしたいタイプ？らしい、俺。

「よく言われますけど(笑)」
俺がそういうと、風磨くんは少し不満そうにふーん、と言った。

「じゃあさ、一緒に作ろうよ。俺の部屋なら、食材あるし。」

え、風磨くんの部屋？
風磨くんの手料理？

「い、いいんですか！？」
テンションが上がって思わず笑顔になる。

「やった！じゃあ料理、教えてください！」
「いやいや、教えられるほどのもんじゃないけど(笑)…じゃ、行くか。」

…ふぅ〜！やった！

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