偶然ですか？

三度目の出会い sideF2 ページ14

中島くん。

さっき下の名前を尋ねたら、満面の笑みで「健人って言います！」って答えてくれた。
笑顔が超かわいいんです、この子。


職場が同じで、最寄りが(これから)同じで、大学が同じで。
昨日知り合ったばかりなのに、もう二日連続で会ってて。

偶然にもほどがあるよね？(笑)


「ねえ、中島くんってさあ…」
「あ、中島でいいですよ！」
名前を呼んだ瞬間にそう返される。
ああ、こいつ、友達多いんだろうなあ。
コミュ力たっか。

改めて話しかける。
「じゃあ、中島で…。中島は、モデルとか何かやってるの？」

「…へ？」

突然の俺の質問に、わかりやすく固まる。
きょとんとした顔で首を傾げる。
「モデル、ですか？」

「ああ、うん、いや…スタイルいいし、綺麗な顔、し、してるな…って…。」

あーやばい。
何言ってんの俺？
自分で言っといて恥ずかしくなってきた(笑)

なんとなく顔が熱くなって目をそらすと、中島は可笑しそうに吹き出した。

「なに照れてるんですか！？」
「いや、照れてねえけど…！」

あははっと笑う中島につられ、思わず俺も笑ってしまった。

「やってないですよ、モデルなんて、そんな。言われたことも、な…くはないですけど…」
もごもごと口ごもる中島。
お前だって照れてるじゃん…！


…ふうん。芸能活動はしてないらしい。
じゃあ昨日の俺は杞憂だったってことか、よかった。

無駄話をしながら1階に戻ると、フロントにお客様がたくさんいるのが目に入った。

「うわっすごい混んでる…。」

隣で中島がつぶやいたのが聞こえた。
一気に緊張してしまったようで、背筋を伸ばして固まっている。
よし、ここは俺の出番だな？(笑)

フロントには店長と山下くん、厨房にも社員さんが二人。
フロアは…誰もいないか。
のんびり教育している暇はない。
フロント横の事務所に入り、中島が来るのを待って扉を閉める。

そばにしまってあった機械を取り出し、中島に手渡す。
「これは、インカムね。これを耳につけて。ここから指示が聞こえるから。マイクは胸につけて…ボタンを押しながら喋ると、声が入るから。遠隔で指示を聞いて、行動してください。」

仕事モードに入った俺の言葉を聞き、真剣な顔で頷く。
先ほど着替えた制服にインカムを取り付け、準備が完了。


バタバタと事務所から飛び出し、山下くんにアイコンタクトを飛ばして階段を上る。
緊張した表情でついてくる中島に、顔だけ振り向いて声をかける。

「よし、初仕事。頑張ろう。」

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