吉原という鳥籠

14羽 ページ16

髪を結い、

顔に紅をひく。

豪華な着物に身を包み、

部屋を出る。

今までとなんの変りもない、動作。

なのに、心は弾むばかり。

千夏も心なしか、上機嫌だ。

千景『失礼いたしんす…

今宵、お相手いたします、風蘭と申します。

この吉原で、お疲れを落としていって下さいまし…』

千夏「風蘭様の禿をしています。

結と言います。

楽しんでいってくださいね？」

部屋に入る前の、お決まりの言葉。

高杉「あァ…

そうかしこまるな…

この前みたいに、普通に話してくれ。」

あぁ…

私が待ち侘びていた、低い声。

空気を大きく揺らしている。

千景『では、お言葉に甘えさせていただきます。』

高杉「今日は、俺の仲間も連れてきた。」

？？「お、女がこんなところに来てもいいんすか？晋助様」

1人の女性が第一声を発する。

？？「貴方はただの猪女でしょう。

何を言ってるんですか。」

？？「誰が猪女っすか！」

男性が声を発する。

…あれ？

千景『ちょ、ちょっと！

ここで暴れるのはよしてください！』

？？「す、すみませんっす！」

千景『あの…

良ければお名前教えてください。』

？？「北島また子です。

よろしくお願いします、

えっと…

風蘭さん？」

千景『フフっ…

また子さんですね。

よろしくお願いします。

改めて、風蘭と申します。』

また子「風蘭さん…

覚えたっす！！

いい名前っすね…」

偽りの名前でも、"いい名前"なんて言ってくれる人がいるなんて、思いもしなかった。

千景『ありがとうございます。

いい名前なんて言われて、とても嬉しいですね…』

高杉「北島ァ…

さっきの質問だが、風蘭に聞いてみたらどうだ？

遊郭で働く、花魁だ。

吉原のこと、

教えて貰ったらどうだァ…」

また子「風蘭さん、

教えて貰っても…」

千景『えぇ…

私で良ければぜひ…』

今日の夜も、楽しくなりそうだ

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