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『じゃあ寝るね。おやすみ』
「ああ。おやすみ…………、A、」
『ん?』
「その、いや、………心配かけてすまなかった。もう大丈夫だ。………、ありがとう。」
『ふふ、どういたしまして』
最低限でない会話。分かりにくいけど昨日より柔らかい表情。本当にもう大丈夫みたいで安心した。
と、思っていたんだけれど。
『おはよう、52』
「っ、お、はよう。」
合わない目線。またどことなくそわそわしている。本当にもう大丈夫なのだろうか。
『それじゃあ、行ってくるわね。』
「ああ。」
『ねえ、52もう本当に大丈夫なのよね?』
ばっと顔を上げた52は、少し眉をつり上げて怒っているような表情をしているが、何となく楽しそうな幸せそうな顔をしていた。
「っ!だ、大丈夫だ!ほら遅れるぞ!!!」
『はいはい』
その表情を見て何となく安心した。
何か気にくわなさそうだけど、真っ直ぐに私を見てくれる。
思春期で反抗期の男の子みたいな表情に、私は息子が出来たような感覚がした。
今日も1日頑張ろうかな。52のために。
土曜日。
今日も今日とて思春期(仮)な52。
いったいどうしたのだろうか。
『………52?』
「っ、なんだ、どうした。」
『いや、どうもしないんだけど、夜ご飯冷めるわよ?』
「ああ、すまない…………」
ずっとこんな調子。一体どうしたのだろう。
『……ねぇ、52。明日水族館いかない?』
「水族館?」
『海の生き物とか沢山いるのよ。とてもきれいだわ。』
「……………………」
『…………それとも明日はやめとく?』
「……………いや、行く。」
どれだけ表情が動かなくとも、やっぱり瞳は正直ね。
楽しそう。
そんな52を見て、私の水族館への期待も膨らんだ。
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作者名:ばんぶー | 作成日時:2020年12月6日 4時