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渡せなかった。
なんとなく、こそばゆい感じがして。

渡そうと思ったら、急に動悸が激しくなる。

そんな俺の様子にAは何を思ったのか、頭を撫でてきた。

「(、ズルくないか。)」

ずるいと自分で思っておきながら、何がどうずるいのかはよく分からなかった。

そもそも一体何がどうズルいんだ。

わからない わからない













昼も食べ終えて、俺は一人、リビングの机に置かれた小包を見ていた。

なぜ渡せないんだろうか。


そんなことを考えているうちに、段々と瞼が重くなる。


「(最近、規則正しい生活をし過ぎたか………)」




昨夜寝れなかっただけで、昼に睡魔なんて………






今の生活が、追い求めていた安寧だからなのかもな、なんて思いながら意識は深い闇に沈んだ。









………て




……………ツー?おき………




「っ!」


『あ、おはよう。52。』


やっぱり昨日寝れなかったのね?と仕事帰りのAが言う。

「あ、ああ。お帰り…」

時計を見ると、何時もより少し早めの仕事上がりになったようだ。

「今日は、少し早いんだな………」

『そうね。早く帰れるよう頑張ったしね。52に会いたかったし。』

「っ、そう、か。」

また動悸が。

明らかに原因は目の前で伸びをしてどこ吹く風といったこいつだ。

この様子からして他意はなく、様子のおかしかった俺を心配しての言葉なのは言うまでもなく理解できる。

なのになぜ、こんなにも。



こんなにも。









わからない。

何もかも。

なんで、`こんなにも´の続きを考えられない。

いや、分かっている。考えてはダメなのだと。

やっぱりこいつは光に住む人間で俺とは違う。

突然俺がこちらに来たように、いつどのタイミングで俺が元居た場所に戻るかわからない。


ダメだ。これ以上は。


『52、夕食の準備手伝ってもらっても良いかしら?』

「……ああ。」









でも、今はもう少しこの状況に甘えていてもいいか。


なんて。



『何笑ってるの?』

「別に。なんでもない。」



プレゼントは夜遅くに部屋にでも置いておこう。

悩んで心配かけるより今を楽しんだ方がずっと有効だ。

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作者名:ばんぶー | 作成日時:2020年12月6日 4時

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