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■41 ページ12

自由。自分で決める。

自分で決めた結果、死ななくていい人達が死んだ。

それから俺は無意識にそれを避けていたのかもしれない。

しかしこの世界では、俺は自由なんだと実感した。


清水寺を出ると、やはりまだ人でいっぱいだった。

はぐれそうだ。Aと手を繋いでいたい。

でも俺から近づいていくのは、こいつとは住む世界が違うし、


「(でも、俺はここでは自由、やりたいように、)」

「…………A、」


『ん?』


「…………はぐれる。」

そう言って握ったら握り返された。それがどうしようもなく嬉しかった。

しかし観光にきている子供たちがヒソヒソと恋人かな?お似合い!と話しているのが聞こえると少し恥ずかしくもなった。

まあ、手は離さないが。














途中、定食屋に入った。

頼んだ親子丼は、何かが違った。

それをそのままAに言うと、当たり前だと返された。

違うんだ、味じゃなくて、何か別のものが違う気がするんだ。

しかしうまく言えずに眉をひそめるだけになってしまった。

それに気づかないAに言われるまま、同じメニューなのに一口ずつ分け合ったりした。

少しだけ、心臓がうるさいような、苦しいような。

何かの病気なのか、俺はまだわからなかった。
















本屋で本を買い、俺が食べたいつまみと飲みたい酒を買って帰る。


夕飯が出来上がり、酒とつまみも出して二人でグラスをぶつける。



『52を歓迎して、かんぱーい!』

「歓迎するのAだけなのに、大袈裟だな」

『良いじゃない、気分よ、気分。』

俺はまだアルコールになれないのでちびちびと飲んでいたが、Aはかなりのペースで飲んでいく。

気づいたときにはAはへにゃへにゃになっていた。



「……大丈夫か?」

『う〜〜、お冷、もらっていい?』

「ああ、」

席を立ち、水を用意して渡す。

『ありがとーおいといてー』

するとAは机に突っ伏してモゴモゴと話始めた。


『私ね、本当に52が、綺麗だと思うわ。私のこと、フィルターを通して、見ないの。私のこと、ちゃんと、見てくれる。お金じゃない関係が、52と結べたんだなぁって、最近、すごく思うの。』

金絡みで、こいつもろくな人生じゃなかったんだろうな。

俺が綺麗だなんて言えてしまう程には。


『だからね、52。好きよ。ものすごく、52が大事。だーーいすき。』









「は、?」


見ると、Aは寝てしまっていた。

どうしようもなく心臓がうるさい。

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作者名:ばんぶー | 作成日時:2020年12月6日 4時

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