4話 ページ4
「広瀬君の仕事が回ってきたんだよ。ほら、亡くなったっていう広瀬春樹君。って、平木と広瀬君は同じクラスだったか」
鈍感と言われがちな俺でも、彼女が愛想笑いを浮かべているのだと気づく程には、彼女は疲れているようだ。
「正直、迷惑なんだよね」
「え？」
気の所為か。藤田が他人に対してそんな悪口を言うなんて考えられない。
やはり俺の聞き間違いだな。その証拠に、藤田の表情は変わらない。
「せめてさ、自分の仕事を片付けてから死んで欲しかった。私のところにまで仕事が回ってきて迷惑しているの。他のみんなも迷惑してるよ」
「......そういうこと言うのは、よくない」
「あー、そうだね。うん、ごめんね。こんな愚痴聞きたくなかったよね。あ、仕事やらないといけないから、またね！」
忙しそうに走り去っていく藤田。
忙しくて迷惑しているというのは、嘘じゃないんだろう。だからこそ、あれは本音だったと思うしかなくて.....。
藤田は少し真面目で、そして友達の多い女子だった。クラスに一人はいるような男女問わず話しかけるフレンドリーなタイプ。
そんな人間があんな事を言うなんて……。冗談だと思いたい。
「よーっす、こんなとこでどうしたんだよ？」
「なんとなく来ただけ。お前は？」
後ろから声が聞こえ、振り返ってみるとクラスメイトの尾崎倫人が笑いながら立っていた。
ジャージを来ているし、部活中か。
「先生呼びに来たんだよ。にしても、お前が職員室あたりをうろつくとか考えられねーな」
「俺にどんな印象を持っているんだ」
「真面目な.....うーん、広瀬みたいなタイプ」
広瀬みたいなタイプがわからないんだが......。
なぜだかわからないが、褒められた気がしないな。
「はぁ.....、お前は広瀬の事をどう思っているんだ」
「急になんで？」
「広瀬と俺は同じタイプなんだろう？気になるのは普通じゃないか」
他人と似ていると言われるのは、あまり愉快な話ではない。
尾崎は疑問そうに首を傾げるが、当然のことだと思う。あと、男が首を傾げてもなにも面白くないからやめろ。
「広瀬なぁ…...、あんまり好きじゃなかった。てか、普通だな。普通に喋るし」
「なるほど。好きじゃない人間に俺は似ていると」
「雰囲気だから！いや、普通にいい奴だよ。宿題忘れた時とか見せてくれるし」
それは即ち、都合のいい男なんじゃないか。
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作者名：朝霧 | 作成日時：2016年3月11日 23時
