_ 備考〜 ページ6
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「悲しい、ですか。苦しい、ですか。……そうですか。ごめんなさい、ボクには掛ける言葉が思い付きません。あなたがなぜ悲しいのか、なぜ苦しいのかは、判るんですが。でも、そこからが……どう悲しいのかが、ボクは理解できないから。"可哀想に"、としか言えません。……あなたを満足に労ることもできないボクが、あなたと居るだなんて。……始めから、至極烏滸がましいことだったんでしょうか」
「夢の中は、楽しいです。でも、夢であると判明している夢は、好きになれません。夢は、いつかは覚めるもので、覚めてしまったらボクの元には何も残らないです。そして、もしもずっと覚めなくても、本当の寝ているボクの方には何もありません。だから、夢と分かっていては、とても空虚です。切ないです。……ボクが本当じゃないことを楽しめるのは、ボクのものが消えることがない、ボクの居ない本の中だけなんです」
【備考】誕生日は八月二十八日。不思議と辺りが静まり返った、夕暮れ時に生まれたらしい。
彼の家の廊下には、彼の誕生花である桔梗が数本描かれた高級そうな絵画が一枚だけかけられている。しかし、彼がその絵画に興味を示したのは、たったの一度だけ。
絵についてお手伝いさんに尋ねた際に、「それは奥様が好きだったお花なんですって」と返ってきたことから、母親を連想させるから、とそれ以来彼は絵を見ることがなくなった。もう二、三年はその額縁を目にしていない。
父親にも何度か絵を外してくれと頼んだようだが、お手伝いさん方があれをよく気に入っているから、と返されてしまった為、以降は仕方なくその廊下をなるべく避けて家の中を移動していた。
家には大きな書斎があり、彼がいつも読んでいるのはそこにある本。
偶に図書館へ出向くこともあり、その際借りるのは天体や動物の図鑑など。小説は、今のところ家にあるものだけで事足りているのだそう。
兄弟が居らず、一人っ子。その上不登校で話せる友達も居ないときたもので、彼は流行にも自分の住む街の地理にもとんでもなく疎い。
かろうじて知っているのは交番と図書館の二つのみで、その他は同年代の子がよく遊んでいる公園や有名なショッピングモールの位置すらも分からない。もし少しでも道を間違えればたちまち迷子になってしまう為、外へ出る時には細心の注意を払っている。
____ついで備考____
享のイメージソング的概念(日本語不自由)を挙げるとすると、恐らく〘ことばのおばけがまどからみている/Frog96 様〙等。これは俺の勝手な願望。
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