_ カスミちゃんに対する印象〜 ページ4
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その後、彼女は火遊びがすぎてある不倫相手の一人に本気で好意を持たれてしまい、痴情のもつれであっけなく殺害された。
これまでは、曲がりなりにも母親として彼と共にあった彼女が、そうとだけ残して死んだ。支えであったものが、その言葉を最期になくなってしまった。
その喪失感と恐怖が、彼が抱く感情の正体である。
一見、母親が死んでしまった、消えてしまったことを悲しんでいるように見えて、しかし本当に考えているのは“自分の支えがなくなる”こと。憂えているのはその一点だけであり、本質は非常に利己的なものだ。
後に、父親から強く抱き締められながら言われた。
「"可哀想に"。
そのとおりに、彼はそれからできるだけ母親のことを忘れようと努めた。家にあった膨大な数の本を読みあさり、現実のできごとをかき消す程に空想に没頭した。そのせいなのかおかげなのか、今ではほぼ母親との思い出は無いに等しく、残っているのも先程の別れ程度。
だが、それでもやはり別れは別れで、今の彼は通算すれば二回も他人に捨てられている。しかも、似たようなことを吐かれて。
それが当時幼かった、そして今も尚幼い彼にとって大きな出来事であったことにかわりはない。
もし、今の彼にまた別れというものが訪れたら。その時彼はどうなるのだろう。恐怖を抱くか、憎しみを抱くか、それとも、一周回って悲しいと思えるようになるかもしれない。
まあその前に、確実に彼の心は壊れてしまうだろうが。
【カスミちゃんに対する印象】初めは、読んでいた小説の人物が少しねじれて夢に出てきただけなんだろう、とあまり彼女のことは気に留めておらず、彼女に対して口を開くこともなかった。
しかし、次の日眠りに落ちても、そのまた次の日に眠りに落ちても、彼女が夢の中に現れたことから、ただの夢ではないのかもしれないと思い、やっと彼から声を掛けるように。
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