緊急事態1 ページ15
和サイド
診療所の前まで来たのに、どうしても嫌だと必死に抵抗するのでこれ以上体力奪われるのも良くないと思い、とりあえず救急用のバッグだけを急いで取りに行きAの家へと向かう。
車の中でずっと声をかけ続けてAが反応することを確認する。
「もうすぐだから頑張ってよ。」
「家についたらすぐに診てあげるからな。」
「すぐに痛いのどうにかしてあげるからもうちょっと頑張って。」
Aからの返事は、かすかに聞こえるうん、という声だけだけどとりあえず意識はあって反応はしている。
「はい、到着したよ。一人で降りてこけたら危ないからちょっとそのまま待ってて。」
運転席から急いでおりて助手席側にまわる。
Aの体を支えてゆっくり玄関まで歩く。
ドアを開けると、もう体力の限界だったのか玄関に倒れこむ。
本当はリビングとかベッドの上とか広い場所で診れたら良いけど、仕方ない。
「ちょっと待ってて。ここにこのままでいてくれて良いから。カバン取ってくるからね。」
10秒もかからずカバンをひっつかんで玄関までダッシュで戻ってくるとAが苦悶の表情を浮かべていた。
A「和くん...」
「ん？大丈夫、大丈夫、ここにいるよ。」
A「ご、ごめんね。」
「なんで謝るのさ。腰診るからちょっとそのまま横向きでいてね。Tシャツまくりあげるよ。触るけど痛かったら我慢しないで教えてね。」
A「和くん...」
「ん？どうした？上のほうから触るけど痛い箇所にきたら教えて。」
何か言いたそうに何度も俺の名前を呼ぶけれどとりあえず手元に集中。
熱を帯びた身体が異常を伝えてくる。
ゆっくりと上から腰椎を触っていくけれど特に痛みを訴えることはない。
「痛くない？この辺りも？」
ぎっくり腰の頻発部位のL4L5付近を触ってみるけど筋肉が硬直している感じも特にしない。
腰じゃないのか？
「A、今痛いところどこ？」
A「ううぅぅ。」
一瞬、お腹をかばうようなしぐさを見せたのを見過ごさなかった。
「お腹が痛かったの？」
聞きながらお腹を少し押さえると悲鳴のような声をあげた。
原因は腹痛か。それでお腹かばうために腰曲げてたってことね。
「大丈夫、大丈夫。ちょっと仰向けになろう、な？ゆっくりで良いから。」
本当はTシャツまくり上げてスカートも下げたいけれど恥ずかしさもあるだろうから
とりあえず痛みの部位を探るために服の上から触ってみる。
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作者名：ルパン
| 作成日時：2019年8月28日 20時
