【実況者】酒に呑まれて。【牛沢･キヨ】

今日も。28。 ページ29

「…ん…？」

朝、見知らぬ場所で目が覚める。陽の光が指した部屋は、いつもの私の部屋ではなくて。

「おはよ」

「キヨ…」

既に起きていたキヨは隣で幸せそうに微笑んでた。
酒で痛む頭を抑え、必死に昨日のことを思い出す。

(そっか…私…)

私はキヨと一緒にいることを選んだんだ。

「…A？」

「あっ…」

ぼーっとしていた私を心配してくれたのか、キヨが優しく私の名前を呼んだ。酷く優しい声に、また涙が零れそうになる。

もう、うっしーはいない。

きっと私のことなんて嫌いになったんだ。
そう思えば思うほど、胸は痛くなって。ズキズキと締め付けられる。

私は、本当にこのままでいいんだろうか。キヨの気持ちを弄ぶようなことをして、本当にいいんだろうか。

自分の最低な行いに、悔しくなって思わず下を向いた。


「…A。」

不意にキヨに名前を呼ばれたかと思えば、昨日みたいに優しく抱きしめられた。

「大丈夫だよ。俺がいるから。」

「っ…なんで…。」


キヨは、私にとって優しすぎる。

こんな私に、こんな優しい人がいてくれて。罪悪感で押し潰れそうだ。


「なんでっ…こんなに優しく…してくれるの？」

零れそうになる涙を必死にこらえ、そう聞いた。

キヨはそれを聞くと、一瞬驚いた表情を見せ、すぐにふにゃっと笑う。

「好きだから」

そう言ったキヨの目には、何の濁りもなくて。

「Aが辛いなら、いつまでも俺が隣にいてあげるよ」

私を抱きしめる腕が強くなる。

私も、それに応えるように抱き締め返した。

キヨが消えてしまわないように。キヨがいなくならないように。

自分勝手でわがまま。

そんなことはわかってる。

けど。


これが夢でも。


これが本来の幸せじゃないとしても。









.









.









.








.




「キヨ、好きだよ」


「っ…。」

最初こそ驚いたものの、すぐに先ほどとは比べ物にならないくらい満面の笑みを浮かべた。

「俺も好き。」



そう言ってキスをする。



これでいい。





うっしーに選ばれないくらいなら。



見たくもない現実を見るくらいなら。




私は。




このまま醒めない夢に溺れていたい。

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