第190話「宣戦布告」夢主 ページ6
「……あれ、敦君と鈴音ちゃんじゃあないかい、あれ?珍しい事もあるものだね。」
「鈴音、さん……ですか。」
今も入院している被害者や、亡くなられた被害者のご遺族の元を半分ほど周り終わった頃のこと。
休憩の為に立ち寄った喫茶店にて、珈琲を飲みながら街行く人々を眺めていた太宰さんはふとそう呟いた。
太宰さんの言葉に、黙って
「二人きり、ねぇ。……如何して鏡花ちゃんが居ないのだろう。敦君も私の部下だからね……疑いたくはないが、仕事を放り出しているのなら__」
「違います!!」
外を眺めたまま目を細めた太宰さんに、私は思わず立ち上がった。
賑やかだった喫茶店の中が静かになり、視線が私に集まり……私は慌てて椅子に座り直した。
「……申し訳ございません。」
「勿論許すとも。……けれど、面白くなってきた。ねぇいろは、君もそう思うだろう?」
「面白く……ですか。」
小さくなって謝罪を口にすると、太宰さんは見定めるように目を細めて私を
「嗚呼、そうだ。面白い。この事件はとても退屈だけれど……鈴音ちゃんが織りなす物語は、実に面白い。」
言葉通りとても楽しそうにそう云う太宰さんに、私は初めて太宰さんに不信感というものを抱いてしまう。
白木鈴音が魅了の異能者なれば、影響下に居る人々は太宰さんの言葉を借りるのならば「操られている」と云う事になるのであろう。
でも、異能の影響下に居なければ「操られていない」と云えるのだろうか。
例えば彼女の思惑通りに動いてしまっているであろう私は、操られていないのだろうか。
彼女に興味を持っている太宰さんは操られていないと言い切れるのだろうか。
「……もう少し待つ事だ。狩りのコツはね、いろは。
嘗て私が見た事の無い程楽しそうにそう云う太宰さんに、私は言葉に出来ない悪寒を感じていた。
「(……もしかすると、今回の太宰さんは味方じゃ、ないのかも。敵なのかもしれない。)」
証拠など無い。
殆ど直感だ。
……けれど、私には其れが真実なのだと想う。
「(
その日、私は静かに宣戦布告を返したのであった。
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作者名:業猫 | 作成日時:2020年8月31日 21時