検索窓
今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:1,999 hit

第190話「宣戦布告」夢主 ページ6

「……あれ、敦君と鈴音ちゃんじゃあないかい、あれ?珍しい事もあるものだね。」
「鈴音、さん……ですか。」

今も入院している被害者や、亡くなられた被害者のご遺族の元を半分ほど周り終わった頃のこと。
休憩の為に立ち寄った喫茶店にて、珈琲を飲みながら街行く人々を眺めていた太宰さんはふとそう呟いた。
太宰さんの言葉に、黙って猪口齢糖(チョコレヰト)菓子(ケェキ)を味わっていた私は目を伏せた。

「二人きり、ねぇ。……如何して鏡花ちゃんが居ないのだろう。敦君も私の部下だからね……疑いたくはないが、仕事を放り出しているのなら__」
「違います!!」

外を眺めたまま目を細めた太宰さんに、私は思わず立ち上がった。
賑やかだった喫茶店の中が静かになり、視線が私に集まり……私は慌てて椅子に座り直した。

「……申し訳ございません。」
「勿論許すとも。……けれど、面白くなってきた。ねぇいろは、君もそう思うだろう?」
「面白く……ですか。」

小さくなって謝罪を口にすると、太宰さんは見定めるように目を細めて私を眺め(・・)ながら許して下さった。

「嗚呼、そうだ。面白い。この事件はとても退屈だけれど……鈴音ちゃんが織りなす物語は、実に面白い。」

言葉通りとても楽しそうにそう云う太宰さんに、私は初めて太宰さんに不信感というものを抱いてしまう。
白木鈴音が魅了の異能者なれば、影響下に居る人々は太宰さんの言葉を借りるのならば「操られている」と云う事になるのであろう。
でも、異能の影響下に居なければ「操られていない」と云えるのだろうか。
例えば彼女の思惑通りに動いてしまっているであろう私は、操られていないのだろうか。
彼女に興味を持っている太宰さんは操られていないと言い切れるのだろうか。

「……もう少し待つ事だ。狩りのコツはね、いろは。獲物(あいて)上手く行っていると思わせること(・・・・・・・・・・・・・・・)だ。」

嘗て私が見た事の無い程楽しそうにそう云う太宰さんに、私は言葉に出来ない悪寒を感じていた。

「(……もしかすると、今回の太宰さんは味方じゃ、ないのかも。敵なのかもしれない。)」

証拠など無い。
殆ど直感だ。

……けれど、私には其れが真実なのだと想う。

「(求めるならば強欲に(・・・・・・・・・)。私に渦巻く黒い欲望も孤独感も全て使って望むものを、手に入れる。取り戻す。)」

その日、私は静かに宣戦布告を返したのであった。

第191話「被害者の共通点?」夢主→←第189話「レジーナのワガママ」夢主



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (3 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
5人がお気に入り
設定タグ:文スト , 中島敦 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:業猫 | 作成日時:2020年8月31日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。