第210話「太宰さんと鈴音ちゃん」夢主 ページ28
そんな事があって鈴音ちゃんと休日に一緒に出掛けることになったことまでは善かった……のだが。
「はァい、いろは!!」
「何で太宰さんが居るんです!?」
待ち合わせ場所に着くと、何故か鈴音ちゃんの腰に手を添えてヒラヒラと手を振ってくる太宰さんの姿があった。
……いや、なんで?
「えぇ?だっていろはと鈴音ちゃんが楽しそうだったから、つい私も混ざりたくなってしまって。」
きゅるん、とグーにした手を顎に揃えて所謂「ぶりっこのポーズ」をする太宰さんに、私は「はぁ……。」と?を頭に浮かべながら頷く。
……まぁ、善くも悪くも太宰さんのお考えは私のような凡人には理解など出来る筈も無いのだからその辺りはとっくの前に諦めているのだが。
「……ま、冗談だけれどね!!実は私、今この辺りで国木田君と一緒に聞き込み調査をしていたのだけれど、そうしたら私の可愛い後輩の友人である鈴音ちゃんがナンパされているのを見かけてね。こうして恋仲の振りをして撃退していた所なのだよ。」
「……成程、左様でしたか。流石太宰さんですね。」
えっへん、と胸を張る太宰さんに、私は微笑みを返す。
……因みに、先程から何も云わない鈴音ちゃんは顔を真っ赤にしてショートしている。
なるほど、鈴音ちゃんによく云われる「ぽわぽわ」とは、きっとあぁいう状態なのだろう。
私、ひとつ勉強になりました。
「……おっと、そろそろ国木田君に見つかりそうだから私は行くよ。二人共楽しんでね!!」
「はい。お気遣い感謝致します、太宰さん。太宰さんも国木田さんを弄ぶのは程々になさってくださいね。」
パッと手を離すとヒラヒラと手を振って人混みの中に去っていく太宰さんに、私は微笑みお辞儀をして見送る。
仕事中ならば咎めもするが、今日は休日なので私も目を瞑っておく事にする。
……まぁ鈴音ちゃんは未だそんな余裕は無いのだろうが。
「……大丈夫、鈴音ちゃん?」
太宰さんの後ろ姿が見えなくなったのを確認してから、未だ放心状態の鈴音ちゃんを振り返ると、ぼっと再び耳まで真っ赤にしてうずくまっていた。
「おーい、鈴音ちゃん?」
「だっ……、大丈夫な訳無いじゃない!!アンタ、よく太宰さんに抱き着いたり抱き着かれたりして平常心保ってられたわね!?」
「……だって太宰さんはお兄ちゃんみたいな感じで、恋愛対象じゃないし。まぁ美形だなぁ、とは思うけど。」
鈴音ちゃんはガバッと顔を上げたかと思えば、私の胸倉を掴んで涙目で訴えてきたのだった。
続く (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←第209話「友人」夢主
5人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:業猫 | 作成日時:2020年8月31日 21時