第204話「収束。参」夢主 ページ22
風が吹いて、スカァトの裾が舞い上がる。
「……それで、用って何ですか、暁さん。」
少し面倒臭そうな表情を浮かべる彼女に、私は微笑む。
「そうですね、ではまずは結論から。」
私は息を吸い、再び口を開いた。
__曰く、「今回の異能通り魔事件の真犯人は鈴音さん、貴女ですね?」と。
「……はい?何の事__」
「勿論貴女は惚けるでしょう……ですが、えぇ。証拠なら有るのです。けれどまずは事件の確認から。」
私はそう云いながら鈴音さんに近付いていく。
この海沿いの公園に居るのは、私と彼女だけ。
遠慮する必要なんてどこにも無い。
「名称の通り、異能を使用された形跡の有る通り魔事件です。被害者は12人。内1人を除いた全ての被害者には、間接的なものも含め3か月前の小学生虐殺事件との関わりがあり、当初私達は関係がない被害者が黒幕である可能性が高いと思っていました。」
「……カモフラージュ、或いは疑われないように自分も……って事ですか?」
「えぇ。……ですが、数日前その被疑者兼被害者が急死したのをきっかけに事件を洗い直し、気が付いたのです。この事件は実行犯の情報が余りに少なく、裏社会の何者かが介入している可能性が高かった。なら、黒幕が居る筈。しかし、彼には裏社会と関わったような形跡は見受けられなかった。__なら、逆だったのでは?」
「……はい?」
ゆっくりと鈴音さんの周りを周りながら推理を披露する私に、鈴音さんは眉を顰めた。
「他の被害者はついでで、本命は被疑者兼被害者だったのです。鈴音さんもご存知の通り、私は元は裏社会の__それもかなり上部の人間ですから、殺すなら「バレないように」「気付かれるなら事件性を出さないように」するのが当然……そんな「常識」に囚われていた。驚きました。ねぇ、鈴音さん。白木の家系は……えぇ、確かに裏社会と関わりがある。裏社会の人間です。それは構わない、些事でしかない。__でも、貴方達って「辿られにくく」する能力はあるのに「隠密に」する能力は無いのですね?」
「……!!」
「依頼者は3か月前の事件の被害者の少年の父親で、彼に依頼された貴女が実行犯を手配した。」
「__暁さん、その推理だと
反撃してやったり、という顔を浮かべる鈴音さんに、私は肩を揺らす。
「……何が可笑しいんですか、暁さん。」
「いえ……失礼しました、鈴音さん。」
さぁ、最終章も後半だ。
私はにこやかに笑う。
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作者名:業猫 | 作成日時:2020年8月31日 21時