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第187話「その少女は異能者である。」夢主 ページ3

「善かった、本当に。無事で善かった。」

太宰さんはそう云うと、私を強く抱きしめる。

それはまるで、「私」がそこに居るということを確認するかのように。
それはまるで、「何か」を酷く悔やんでいるかのように。

一方、私はどうして太宰さんが急に鈴音さんに対しての態度を変えたのか、どうして太宰さんが今にも泣きそうなのかが判らなくて、混乱していた。

「ごめんね、いろは。鈴音ちゃんを探っていたのだけど……それによって私までもがいろはの傍を離れるといういろはの負担を考慮出来ていなかった。悪かった。」

泣きそうな声でそう云う太宰さんに、私は首を振って否定する。

違う、太宰さんが悪いのではない、私が悪いのだ。
黒い感情を持ってしまった私がいけないのだ。
太宰さんのお考えを理解出来なかった私が駄目なのだ。

だから、私は首を振って太宰さんの言葉を否定した。

それから、私は私の感情を無理矢理押し流して、「聞かなければいけないこと」を問う。

「……それより、鈴音さんを探っていた……って、どういう事ですか?」
「あぁ……彼女、異能者なのだよ。詳細が判らなかったからね。」

太宰さんはそんな私に少し驚いたように目を見開いた後、優しく答えて下さった。
私は太宰さんのお言葉に、目を見開く。

異能者?
でも、そんな報告は無かった筈だ。
となると、意図的に隠していたということになる。

意図的な隠蔽というのはそれはそれで問題だが、それよりも__

「……異能者、ですか。それで、彼女はどのような異能を?」
魅了(・・)だ。」

魅了の異能。精神操作系の異能。
Q並みに危険で厄介な異能者だと考えるべきだろう。
それに……初日に国木田さんに対して感じたあの違和感も、彼女の異能の影響下にあったから、と考えれば納得出来る。

「最も、細かい点はまだ調査中でね……。今影響下に居るのが男のみなのが「男限定」だからなのか、鈴音ちゃんがわざとそうしているのかは判らない。それに本当は魅了以外も可能かもしれない。」

淡々と告げる太宰さんに、私は目を見開いた。
太宰さんを以てしても情報を収集し切れて居ないとなると……__

「……乱歩さんには?」
「警戒されているようでね。」
「そうですか……。」

乱歩さんに頼れないとなると、かなり難易度が上がる。
それに、不自然ではあるが現時点でそれ以外、彼女は何もしていないのだ。
対処しようにも出来ないのが今の私達なのだった。

第188話「さり気ない(?)心遣い」夢主→←第186話「威嚇」夢主



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設定タグ:文スト , 中島敦 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:業猫 | 作成日時:2020年8月31日 21時

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