番外編「甘くて」 ページ13
「出来ましたわ!!」
目を輝かせてそう云うナオミに、いろはは微笑む。
「谷崎さん、喜ぶね。」
「だと良いのですけれど……。……いろはちゃんは出来ました?」
「え?あ、嗚呼、まぁ、一応……。」
そう答えたいろはの前には、綺麗に膨らまずに萎んでしまった
「まぁ!!可愛らしいですわ!!流石いろはちゃん!!……でも、いろはちゃんも人間ですのね。」
ぽい、といろはの作った失敗作を口に放り込み乍ら、ナオミはそう云う。
そんなナオミをみたいろはは、驚いたように「どういうこと!?」と聞き返す。
其れもそうである。
何故なら、突然「人間ではないと思っていた」とも受け取れる発言を、友人だと思っている少女の口から聞くことになったのだから。
「いえ、別に特別な意味は無いのですけれど……。いろはちゃんって、お強くて賢明で可愛らしくってその上お料理も上手なんですもの。まるで、少女漫画のヒロインのようですわ。……ですから、当然の様にお菓子作りも職人さんの様にお上手なんだと思ってましたの。……でも、こんなに沢山失敗なさるんですもの。……作られた存在なんかじゃないんだって思えましたわ。」
そう云うと、微笑んでいろはの頬を何処か艶やかな手つきで撫でるナオミを少女は見詰める。
「……強いのは、太宰さんに鍛えて頂いたお陰。」
「……え?」
「賢明なのは……太宰さんに認めていただきたくって努力したの。可愛さはちょっと分からないけれど、笑っている理由なら太宰さんが「そうした方が良い」と云ったから。料理も、太宰さんに喜んで頂きたくって。」
「いろは、ちゃん?」
「……私の、全てだったの。太宰さんは。楽しいし、幸せだと思ってた。……でも、敦くんが、現れて、初めて、太宰さんの為以外に力を使いたいって思うようになったの。」
いろはは瞳を閉じると、自然と微笑みを浮かべる。
それは、言葉にするならば……まるで、聖女の様であった。
「私の世界が広がったのは、敦くんのお陰なの。……普段は、恥ずかしくって云えないから。ちゃんと、お礼を伝えたくって。」
そう笑ういろはに、ナオミはいろはの手を取ると、食い気味に云った。
……曰く、「ナオミ、いろはちゃんの恋を応援しますわ!」と。
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作者名:業猫 | 作成日時:2020年1月6日 15時