第148話「白黒の厄災(後編)」夢主 ページ6
「僕が……僕が、皆を護るんだ!」
敦くんはそう云うと、手足に虎化を掛けて私に襲い掛かる。
私は異能を使って、敦くんの頭上に逃げた。
「……!」
驚いた様に目を見開く敦くんの背後に、私は降り立つと……もう一度、名を呼ぶ。
「……敦くん!」
「早くおねぇさんを何とかしないとその二人が殺されちゃうよ☆」
そんな私を嘲笑うかのように、Qは愉しそうにそう云う。
「……Q、其処で待ってなさい。私が……女王が、貴方に罰を与える!」
「怖いなぁ……でも良いの、おねぇさん?ぼくに構ってたら……」
その時だった。
虎の爪が、私の周りを護っていた異能を切り裂く。
「……!」
そしてそのまま、敦くんは私目掛けて虎の拳を___
「……そう簡単に、やられてあげない。」
「うふふ……そうじゃなくっちゃ!ぼく、おねぇさんのこと知ってるんだ。ずぅっと、太宰さんがおねぇさんのこと護ってたからね。」
「……太宰、さん?」
私が思わず、動きを止めたその時だった。
「ぐぁっ……!」
「見ろ!此れが僕だ!僕の、力だ……!」
敦くんは、私の首の後ろ辺りに手刀を食らわせると、バランスを崩し、うつ伏せに倒れた私に畳みかける様に馬乗りになり、首と手首を押さえつける。
「あつ、し、く……。や……、やめ……」
また、私は縋りつくように名前を呼ぶ。
頸は痛いし、意識だって朦朧としてる。
正直、今すぐにでも投降したいぐらいだ。
……でも、私は女王を身に宿す者として、太宰さんが誇ってくれた部下として、負ける訳にはいけない。
負けては、ならない。
視界の隅で、春野さんが……ナオミちゃんが、真っ青な顔で心配そうに私を見ていた。
私は目を固く閉じる。
……暴走してしまうかもしれない。
でも、それ以外に道が有る様には思えない。
……女王を、呼び出すしか____!
その時だった。
「止めるんだ、敦君!よく見ろ!」
焦った様子の太宰さんが、声を荒げた。
太宰さんの声にハッとした敦くんは、私を抑える手の力を、思わずと云った様子で緩めた。
私は、必死に息をする。
頸を押さえつけられていたが故に、殆ど息が出来ていなかったのだ。
「……そんな。最初から僕が……?ぼ……僕は、何も……。ただ……守ろうとして……!」
そう、
ただ、静かに。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年9月9日 16時