第172話「女王とポートマフィア」夢主 ページ30
……あれから、1週間が経った。
私は、今回の件でまだまだ情報網が未熟で有る事を思い知り……単独行動をしながら、情報網の拡大の為に動いていた。
もっと広く、もっと深くせねばならない。
この街で、この国で、知りたいと思ったことは全て分かるくらいにまで。
私には太宰さん程の頭脳も、中也さん程の戦闘技術も……芥川さん程の異能の強さも、敦くん程の正義感も持ち合わせていない。
……ならば、私は情報を。
強欲に、全てを知る努力を。
其れが、きっと私の大切なものを護る武器になる筈だから。
……私は、彼の人のように完璧にはなれないけれど、きっと此れが最適解だから。
「……広津おじさん。如何して此処に?私は、貴方とは戦いたくないのだけれど……。」
私は後を付けて来ていた人物にそう云いながら足を止めると、ゆっくりと振り向いた。
広津おじさんが本気なら、此処まで隙を見せれば私の命は無いだろう。
……けれど、赤黒く染まった花が散る事は無かった。
私の瞳は、無事に広津おじさんの姿を映す。
「……首領からの伝言です。『マフィアに戻る気は無いかね?』とのこと。」
広津おじさんは、目を伏せたまま、そう云った。
私は驚いた顔から、微笑んでみせた。
「……太宰さんが、マフィアに戻るのならば。広津おじさんはよく知っているでしょう。私にとって、太宰さんが世界の理であり世界の存在理由であり、……全てなのです。私のあらゆる力は、全て太宰さんに捧げています故……太宰さんが戻る判断をしたのならば、私は再びマフィアの為に全力を尽くしましょう!」
私は両手をバッと開いた。
……狂気に塗りたくられた笑顔で。
一瞬の後、私は普段のように微笑んでみせたのだった。
「……ですから、森さんにこうお伝え下さい。私を利用して太宰さんを取り戻そうとするのは不可能です、と。」
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年9月9日 16時