第158話「太宰さんの補佐」夢主 ページ16
「待って、いろはちゃん!護りに行くって……如何やって?此処からは結構距離が有るし、間に合うとは思えないんだけど……」
そう云う敦くんに、私はニヤリと笑うと、王女を呼び出す。
それは、護りの王女でも、形だけの王女でも無い。
「……そうだね。前までの私なら、絶対に間に合わない。……けど、今の私には王女が居る。」
それだけ云うと、私は階段を駆け下り、外に出ると、背後から付いてきていた王女の方を向き、‟お願い”した。
「王女、お願い。私を太宰さんの所まで連れて行って。出来るだけ早く!」
……と。
私のその言葉を聞いた王女は、少し頷くと私を抱きかかえ、飛び上がる……と、一瞬のうちにヨコハマは私の遥か下に遠ざかる。
この王女は女王のスピードだけを受け継いだ存在で、防御力も攻撃力も殆ど無い。
故に、この状態で奇襲でも仕掛けられようものなら、私は高確率で死に至るのだが、それは殆ど無いだろう。
……何故なら、マフィアにとっても、組合にとっても、勿論探偵社にとっても……私の死は不利益しかないのだ。
理由は不明だが、私に賞金を懸けた組合に、戦力として私や太宰さんを連れ戻したいポートマフィア。
探偵社にとっては、私は護りの要である(勿論、探偵社が私に奇襲をかける理由など無いのだが)。
……なんて考えているうちに、王女は速度を落とし始めた。
そして、王女が私を降ろしたのは……
「……あの車の中に太宰さんと安吾さんが?」
とあるビルの屋上であった。
振り返り、王女にそう問いかけた私に、王女はこくりと頷いた。
私は有難う、と礼を云うと異能を解く……と、満足そうな表情のまま、王女は消滅した。
其れを見届けると、私は辺りを見回す。
……此方に迫ってくる一台の
となると、何者かの罠、若しくは攻撃と考えるべきだろう。
太宰さんが其れを予想していない訳が無い。
大怪我をすることも想定済み、となれば……うん、思いついた!
私は微笑み、異能を発動したのだった。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年9月9日 16時